第19話
「へぇー。これが古龍か」
僕はとある山奥の巨大な洞穴の上空に浮かび、洞穴の中で気持ちよく眠っている巨大なドラゴンを見下ろす。
そう。ドラゴンだ。
古龍。そう書かれていたのだが、目の前にいるこいつは胴体の長い蛇のような、なのに手足を持っているという見た目、僕の知っている龍ではなく、ドラゴン。背中に生えるのは巨大な翼。胴体も蛇のように長いとは言えない。
「ふむ。かなりの大きさ。それに力だ。これは……久しぶりに楽しめそうな相手だ」
僕にお姫様抱っこされているアレーヌも古龍を見てそう告げる。
ちなみにだが、アレーヌさんは空を飛ぶことが出来ない。普通にジャンプで空へと浮かび上がり、足をバタつかせてそのまま空の中を進んだりすることは出来るが、空を飛ぶことが出来ない。……飛んでね?
飛んでいるような気がするが、飛べないのだ。僕は魔法を使って空を飛んでいるのだが、アレーヌさんはその魔法を使えない。だから飛べないんだそうだ。
なので、僕がアレーヌをお姫様抱っこして運んでいるのだ。
「どっちが戦う?」
「……以前僕が貰ったから今回はアレーヌに譲るよ」
少し前に僕がアレーヌからノーライフキングを譲ってもらったので今回はアレーヌに譲ることにする。
「わかったわ。じゃあ下ろしてちょうだい」
「はいさ」
僕はアレーヌさんを投げる。
ヒューーーーーーーーー
アレーヌさんは風を切り、下へ下へと落ちていく。
ドゴンッ
凄まじい衝撃が山を震わし、クレーターを作り出す。アレーヌは鎧に大剣に、筋肉覆われた自身の肉体に。結構重いからね。クレーターくらい出来る。
「ふんっ!」
アレーヌは背中から大剣を引き抜き、構える。
「私はアレーヌ!元アラキア公国の騎士団長にして、現アイアンクラスの冒険者!」
眠っていた古龍が目を覚まし、ゆっくりと体を起こす。
古龍の警戒心に染まった瞳はアレーヌを自身の脅威だとはっきりと認識していた。
賢い古龍だ。
「ガァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
古龍の咆哮。
口から漏れ出す凄まじい声量の咆哮はさっき以上に山を震わせる。
でっか……。なんつう声よ。普通の人間ならそれだけで鼓膜パン!だよ。
僕は魔法で保護しているから大丈夫だけど。
魔法で保護もしておらず、古龍の前に悠然と立っているアレーヌは化け物に違いない。
「いざ尋常に勝負ッ!」
大剣を構えたアレーヌが地面を蹴った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます