第18話
「古龍の依頼を受けるですって?そんなの承知出来ません!」
僕たちが受付嬢さんに向けて古龍の依頼を持っていったらそんな風に言われた。
「アイアンクラスの人間がこの依頼を受けるとか信じられません!」
……。
ここはこの国、アラキア公国の僻地。辺境も辺境だ。
こんなところに普段騎士団は来たりしない。
ここの人たちは僕らのことを知らなかった。アレーヌは歴代最強の騎士団長であり、僕はそんなアレーヌさんに唯一並ぶ者だ。
僕ら二人で倒せない相手がいるのならばそいつを倒すことは誰も出来ないだろう。
「……どうする?」
「そうだな。……少し私も戦ってみたいところではある」
「同意。じゃあ依頼を受けるのは諦めて、普通に戦いに行こうか。素材を売ればお金になるでしょ」
「……うむ。そうだな」
僕とアレーヌさんは受付嬢さんに背を向け、出口に向かって歩き出す。
「ちょっと待ってください!戦うのを認めるわけにはいきません!」
「別に構わないでしょう?命知らずの馬鹿が死ぬだけです。あ、もし倒せたら依頼金とかもらえたりしますかね?」
「おいおいおい!」
僕が受付嬢さんと話していると、酒を飲んでいた冒険者の男がこちらに近づいてくる。
「おめぇ。古龍と戦うとか馬鹿じゃねぇのか?ア?調子のんなよ?」
おぉ!!!僕は内心で歓声を上げる。
冒険者に絡まれた!めちゃくちゃ嬉しい!異世界ファンタジーキター!!!
……だけどこんなことをしている場合じゃない。
アレーヌが怒り出したら大変なことになる。以前僕に絡み、胸ぐらを掴んだ騎士の一人は腕を失った。
あの悲劇を繰り返すわけにはいかない。僕が動き出すべきだろう。
「ふん」
僕は腕を一振り。
凍りつく。
冒険者ギルドの床が、この場にいるアレーヌ以外の足ごと。
「なっ!?」
足を凍らせれ、ぴくりとも動けなくなった冒険者の一人が無様な格好で固まり、驚愕の声を上げる。
「ご忠告ありがとうございます」
僕は冒険者の一人に笑顔を向ける。
言い方は粗暴そのものだが、この人は善意で僕たちに忠告してくれている。後輩を死なせたくないという心遣いだろう。
冒険者には粗暴が悪い人が多いが、別に全員が根っからの悪人というわけではないのだ。
「ですが、僕たちには不必要です。すみませんね」
パチンっと一回指を鳴らす。
パリンッ
甲高い音ともに氷が破裂し、光を反射し光り輝く氷の結晶が床に落ちて消えていく。
「じゃあ行こうか?」
「うむ」
僕とアレーヌは呆然としている周りの人間を放置して、冒険者ギルドを出た。
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