第7話

「おぉ!これが冒険者ギルドか!」

 

 僕は冒険者ギルドに入り、歓声の声を上げる。

 異世界に来てから僕はずっと騎士団に居て、冒険者ギルドとか来れていなかったのだ。

 酒場のような建物の中に、戯れる大柄で厳つい男たちに、魔法使いの格好をしたエロいねぇちゃん!奥に見えるのは数多の激務で瞳から光が失われているギルドの受付嬢さん。

 やっぱり異世界って言ったらこれだよね!

 うん!

 僕は久しぶりの異世界らしい光景にテンションが上がる。これは初めてドラゴンを見たときの感動に匹敵する。

 

「ふむ」

 

 買ったばかりの鎧を身に着けたアレーヌさんが迷わずに受付嬢のところに向かっていく。


「は……?騎士団長様がなんで?」


「うちに何のようだ?」


「……あれ?騎士団長用の鎧と剣じゃなくないか?」


「隣の男の子は何だ?」


「あぁ……確か副団長だよ。ほら、新しい」


「あぁ」


「だけど、騎士団の鎧つけていなくね?」


「……確かにそうだな」


 僕とアレーヌさんを見て、中冒険者たちがざわめき出す。

 まぁそりゃそうだろう。


「あら。随分と隣の男の子は可愛いようね。食べちゃいひぅ!!!」

 

 そして、僕に向かってそんなことを言ってくれたエチエチな女冒険者はアレーヌさんの一睨みでノックアウト。白目向いてぶっ倒れた。

 口から泡まで吹いていやがる。

 ……実際に口から泡を吹いている人なんて初めて見た。

 ナニコレ怖い


「ふんっ」

 

 アレーヌさんは受付嬢の方に近づいていく。


「な、何でしょうか?騎士団長様」


「私はもう騎士団長ではない。辞めたのだ」


「え?」


 受付嬢さんがそれを聞いて完全に硬直する。そして、聞き耳をたてていた冒険者たちもそれを聞いて驚き、ざわめきだす。


「それで、だ。私は冒険者になりたいのだ。手続きをしてもらえないだろうか?」


「ぶぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええ!!!」

 

 とてもとても可愛らしい受付嬢さんにはまるで似合わない声で叫ぶ。

 まぁそれも当然だよね。


「アレーヌさん。ちょっとどいて」


「うむ」

 

 僕はアレーヌさんを押しのけ、受付嬢さんの前に立つ。

 そして、受付嬢さんの耳元に顔を近づけて囁く。


「別に何もおかしなことじゃない。元騎士団長が冒険者になることもある。君はいつもどおり手続きを行うだけ」

 

 魔力の込められた声というのはそれだけで価値がある。相手を簡単に魅了する。一時的ではあるが。

 受付嬢さんはまるで僕のことを神様を見るかのような熱っぽいを視線を向けながら書類に手続きをしてくれる。

 うんうん。いい子だ。

 さて。

 後ろが怖くて振り返れません。助けてください。

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