第4話

「……え?」

 

 信じられないくらいのドスの利いた低い声に僕は固まる。

 なんか殺気を感じる。あれ?なんか僕ヤバいこと言った?も、もしかして死ぬの?僕。

 恐怖で顔を上げられない。何が?何が起こったって言うの?


「なぜだ!?」

 

 そんな僕はアレーヌさんに勢いよく肩を掴まれ、強制的に顔を上げられる。


「ひぇ」

 

 アレーヌさんの瞳。それを見て僕は思わず悲鳴を上げてします。

 元々感情の浮かばない冷たい瞳だが、今はそんなレベルじゃない。ハイライトが消えていた。


「その、旅に出たくて」


「旅、だと。……それは私と騎士団で働くことよりもしたいこと、なのか?」


「は、はい」

 

 僕はアレーヌさんの言葉に頷く。

 悪いのだが、ここで引くわけには行かない。早く味覚を復活させたいのだ。僕は。


「……それは冗談じゃないのだな?」


「は、はい」

 

 僕は頷く。

 ……。

 …………。

 沈黙。重苦しい沈黙がこの場を包み込む。


「そうか……」

 

 一言。アレーヌさんの言葉が響く。今の僕にアレーヌさんは死神のように映っていた。


「仕方ない」

 

「はへ!?」

 

 僕はアレーヌさんにのしかかられ、押し倒される。

 僕の貧弱ボディーじゃアレーヌさんの力強い屈強な肉体に対抗することは出来ない。

 

「な、何を?なんで?」


「……なんで、だと?これはすべてがお前が悪いのだ」

 

 ぐいっとアレーヌさんの顔が僕に近づく。


「こんな力強く、男勝りであった私を女として見てくれた者など誰もいなかった。しかし、お前だけは別だった。初めて会った日。お前は私の胸に視線を向けた」


 ……うっ。バレてる……。

 下心を直接言われ、死にたくなる。


「それが……本当に嬉しかった。私の女としての本能を焚き付けた。あぁ。そうだ。お前の全てがダメだ。全てが愛しい。そんなにも可愛くて。食べちゃいたくなるような体をしているお前が悪いのだ。お前は私を心底魅了した」

 

 アレーヌさんの温かい手のひらが僕の頬を撫でる。

 ……落ち着く。

 僕の心はこれ以上無いくらいの安心感に包まれ、それと同時に興奮してきた。下腹部は反応しないけど。

 アレーヌさんいい匂い。おっぱいデカい。

 

「……なのにお前は裏切った」


 ……え?裏切った?

 そんなことしてないくない?旅に出たいと言っただけよ?


「わかっているのか?私がお前にどれだけ尽くしてきたのか。お前が騎士団に入れるように手回しをしたし、お前がミスをしても全て私が揉み消した。お前をいじめるた団員はすべて私が裏から手を回し、解雇した。」

 

 ん?ん?ん?それはダメじゃね?

 割と冷静な僕は普通に心の中でツッコむ。

 

「なのに……私がこれだけ愛しているのに。お前は私の気持ちを全然理解していなかったのだな」

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