獅子
「よくもそんなことが言えるわね?いったい誰のせいであたしが成仏できないと思ってるのよ、何年も何年もこんな中途半端なわけのわからない・・」
「シャクティ?」
「知らないわ、あなたなんかとっとと死んでしまうといいのよ!あの世では二度と会わないわ、一緒だなんてご免ですからね!」
「お、おいシャクティ!」
シャクティはそれだけ叫ぶように言うとふっと姿を消してしまった。あれで滅多に怒らないシャクティがそこまで言うのを初めて聞いたバーリは、ひとり取り残されて気が抜けたように立ち尽くしていた。それでも思い直して若干のろのろと廊下を進む。
あいつ、いつだって俺には五倍くらいすごいこと言うくせに。でももしかして・・もしかして、思ったより気にしていたんだろうか、成仏できてないことを?
「早く成仏したかったのかねえ。」
勝手に、それなりに今を楽しんでるんじゃないかと思っていたりもしたのだバーリとしては。でもやっぱり悩んでいたんだろうか、ああ見えて。だとすると俺は今まであんなに一緒にいて、どうしてわかってやってもなかったんだろう。
「シャクティ!」
もう一回呼んでみた。返事はない。
そのうち機嫌も直すだろうか?
気付くともう目の前すぐに、廊下の突き当たり、重々しい、これまたぴったりと閉じた岩の扉が立ちはだかっていた。
これはどうやって開けるのだろう。さっきファルは手のひらを当てていたな。
バーリはファルの真似をして、扉に手にひらをぴたりと付けてみた。何も起こらない。やっぱりな、と苦笑いしたところで、うしろに低いうなり声を聞いた気がした。
彼は肩越しにそちらを見た。そこには獅子が・・さっきファルが追い払った大きな虎よりまだひとまわりでかい獅子が、燃えるようなたてがみを振り乱しうなり声をあげていた。頭を低く下げ、これはどう見ても戦闘体勢に入っている。これ、いったいどこからいつの間に?しかしそんなことを深く考えている暇はなかった。
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