口が滑る
しかし何だって俺だけ落とされなくちゃいけないんだ?凝った嫌味しやがって・・。
「やっぱり偽者だからじゃないの?」
シャクティが現れて絶妙のタイミングでそうツボをついた。
「・・・。」
バーリは返す言葉がしばらく見当たらなかった。
「元が偽者だって今は違うだろう。」
「違う?」
「違うだろ、俺はちゃんと養子縁組もして、きちんと送りだされて」
あの小さな部屋の中で。
「式も挙げて・・。」
棺の中の皇女。白い白い花に埋まって、そのまま沈んでいってしまいそうな。
「今じゃ・・。」
シャクティの目がわずか細く絞られた。しかしすぐにそれは打ち消され、いつものからかうような調子で彼女は言った。
「まあ、あなたったらラーダーナ様を好きになったの?わかるけどね、とってもきれいだったし・・」
そうだ、確かに。
「モロにあなた好みだしね。」
それは余計。
「いくらわかると言っても、相手は亡くなった方よ。あなたったらとことんロマンティストに出来てるのかそうじゃなかったら」
そうじゃなければ?
「・・あぶない趣味持ってなかったわよねえ?」
なんだろうそれは。
「うるさいな、そんなんじゃないよ。しかし仮にも皇女と結婚した相手なんだからな、俺は。すこしは認めたっていいだろうにこの扱いだ。」
「結婚・・あれがねえ。ラーダーナ様と口きいたこともないくせに。」
「ああそうだよ、声も聞いてないし話もしてない、むこうはこっちの顔だって見ちゃいないんだ。皇女殿はまっとうに成仏しちまったからな、誰かさんと違って。」
「・・何ですって?」
シャクティの顔色がさっと変わった。バーリはそれに気付かないふりをした。
「全くあんたみたいに出てきてくれればいいのにさ、せめて一回だって。成仏仕損なうなんてドジ踏めるのも一種才能なのかもしれないよな。」
バーリがこんな物言いをするのはめずらしかった。聞いたシャクティの顔色は、これもまた見たことがないくらい固くなっている。
「あなた・・。」
その声の調子にさすがにバーリもまともにシャクティの顔を見た。
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