第24話【第二の老人、現る!】

「フンフフーン♪ やっぱりまだお店残ってたー!」


 ベリーは第一階層の街で、まだ食べたことのない店を見つけては食べまくっていた。

 一体その小さな体にどれだけの食べ物データを蓄積するのか……しかし、ほとんどのお店はあらかた食べ尽くした為、ベリーは公園のベンチでつい先程買った肉まんやらコロッケやらたこ焼きやらを食べて少し休憩していた。


「いい天気だなぁ……そーえば何か忘れてるような?」


 そんな思い出しかけたことはコロッケと一緒に飲み込んでしまったので、もうベリーは修行を忘れていた。


「うまそうなコロッケじゃな」


 もう一つのコロッケに手をつけようとしたその時、ベリーに話し掛けてきたのは髭の長いおじいちゃんだった。

 そう、なんとベリーが第一階層の飲食店を全て回ったことによりクエストフラグが立ち、『五老人ミニゲーム2』が始まったのだ。


「はい! 美味しいですよ! 食べますか?」


 しかし、クエストが始まっていることに気付かないベリーは老人にコロッケを渡す。


「いやいや、貰えんよ……だがそうじゃな、一つ勝負をしようじゃないか」


「勝負?」


「フフフ……着いてきなさい、紹介しよう」


 そうしてベリーは言われるまま、老人に着いていくのだった。

 そこでベリーはようやく気付く。

 老人が勝負をしようと言ってくるのはこれで二度目なのだ。

 また何かのクエスト何だろうと思い、老人に着いていった。



* * *



「ここじゃよ。さあ、入りなさい」


 着いてきた先は前まで廃墟だったはずの場所だった。

 そこは前の壊れかけた廃墟とは違い、和風な雰囲気の店だった。


「おすし……お寿司屋さん!?」


 ベリーはその店ののれんに書いてあった文字を見てここが寿司屋だと気づく。


「さあ、勝負勝負ッ!! 一番多く食べた方が勝ちじゃ!!」


 老人がそう宣言すると、ベリーの前に『クエストを開始しますか?』という文字が書かれた半透明のパネルが出現した。


「もちろん、受けて立つよ! おじいさん!」


 こうして、五老人ミニゲーム2……大食い対決が始まったのだ。


「今回寿司を握ってくれるのは九代目店主、鮨正すしまささんじゃ」


 そう言って強面の店主が紹介される。


「やるのはいいが、残すなよ」


 鮨正という名の店主は睨みながらそう言って、早速準備に取りかかった。


「寿司ネタは自由じゃからな、存分に食べるがいい、まぁわしが負けるわけないがな!」


「私だってやるからには負けないよ!」


 そう言ってお互い席に座ると店主がスタートの合図をする。


「はいスタート」


 と、軽くスタートした勝負だが、かなり熱い戦いになる。


「じゃあ今日のオススメを頂こうかな」


「じゃあ全部だな」


「わ、私も全種類ください!」


 いきなり全種類頼んだ二人は出てきた寿司から順に食べ始める。


「はぁああっっ!! はむはむもぐもぐはむはむ――」


 喉に詰まらせるんじゃないかとヒヤヒヤするほど、老人は猛スピードで食べ始める。


「は、速い! 私も……はむ……おぉ、美味しい! 凄い美味しいよぉ!」


 老人のスピードに着いていこうとしたベリーだが、寿司が美味しすぎて普通に味わって食べていた。


「ふ、その程度のスピードじゃあわしには勝てんぞぉぉ! しかし今日もうまいのぉ」


「あーん♪ ふぉあああ、この大トロしゅごいぃぃい!」


 と、ここまで老人が優勢だと思われていたが……後半戦に突入すると状況は一変する。


「はぁ、はぁ、飛ばしすぎたわい……あ、顎が、動か……な……」


「モグモグ……イクラくださーい!」


 猛スピードで食べていた老人は顎のHPが無くなり、もはや食べることが難しくなっていた。

 一方ベリーは余裕の表情でイクラを平らげた。


「くぅ……コロッケやらなんやらを食べてもまだ食うか! やりおるな!」


「あ、エビもくださーい! あとサーモンもー!」


「お、おぉ……わかった。しかし大丈夫か? そんなに食べて……」


 見た目が小さいベリーがもう二百貫も食べているのでさすがの店主も心配していた。


「まだ全然大丈夫ですよ〜」


「そ、そうか……」


「……あっダメじゃ、負けを認めよう」


 老人はベリーの食べっぷりを見て、自分には勝てない相手だと悟る。


「え? じゃあ……」


「あぁ、おぬしの勝ちじゃよ! 全く……久々に負けたのぉ!」


 晴れてベリーは《五老人ミニゲーム2》をクリアしたのだった。

 ただベリー自身はただ普通に食べていただけなので勝った感じはしなかった。


「ほれ、わしに勝った褒美にこれをやろう。我が家に代々伝わる秘伝じゃ」


「あ、ありがとうございます!」


 そしてベリーは老人から【捕食者】というスキルを受け取ったのだった。


「おぉ……! なんかかっこいい」


「それじゃあ、俺からもやるかな……んじゃまた来いよ」


 そう言って店主は謎のチケットを渡す。


「……これは?」


「あぁ、次回の料金全部無料にしてやるってことだ。今回は負けた爺さんから頂く」


「つ、ツケにしておいてくれ……」


「ありがとうございました! また来ます!」


 ベリーはそう元気よく言って、手に入れたスキルを試すべく、早速フィールドへ向かうのだった。



* * *



「はあ、やっぱり五老人ミニゲーム見直して良かったな」


「そうだな、やはりベリーちゃんは五老人ミニゲームをクリアしたけど……」


「いや、見直したの店だけじゃん、寿司屋にしただけじゃん」


 と、男たちがベリーの五老人ミニゲーム攻略を見て言う。


「で、気は済んだか八神?」


 呆れた表情を見せた三嶋が《五老人ミニゲーム2》の店を変えた張本人を見て言う。


「満足満足! 美味しそうに食べてくれたし! はぁ〜、やっぱりちゃんと会いたいなぁ……」


「あー、はいはい……さっさと次のイベントの準備するぞ」


「あ、いや……私はこれから休憩が……」


「自分で休憩時間削って寿司屋にしたんだろ! 他の奴らも巻き込んで!」


「す、すんません……頑張ります」


「よし、じゃあ俺はちょっと休憩してくる」


「なんでさぁぁぁぁあ!!!」

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