第20話【機械の街で、レッツドライブ】
「到着~! ……おぉ、ベル凄いよ! 歯車だよ!」
「ちょっ、待っ……ベリー速いっ……!」
《シュッツガイスト・オートマトン》を倒し、長い長い階段を上ると、そこは大量の歯車が回っている機械仕掛けの街だった。
ベルたちは長い階段で息を切らしているが、ベリーは元気に街を走っていた。
「ベリー……はぁ……凄い……」
と、一番つらそうなフィールが息を切らしながらそう呟く。
「てか……誰も居ないな? まさか一番乗りか?」
「うーん……あのボスの詳しい攻略法は出てなかったから……多分そうかもね」
バウムが走り回っているベリーを見ながら言う。
「……そうかぁ、んじゃ俺は見るもん見たし、今日は疲れたしログアウトするわ。バウムは?」
「そうだなぁ……ちょっと街を見てからログアウトするよ」
「そうか、じゃあまた明日なー」
ソラは疲れたからと、そうしてログアウトしていった。
《シュッツガイスト・オートマトン》のほとんどの攻撃を一人で防御してみんなを守っていたのだから、疲れも溜まる。
「……私も、ログアウトする……みんなバイバイ」
「あぁお疲れ様、フィールさん」
「……ん、お疲れ」
フィールもログアウトし、ベリー、ベル、バウムの三人が残った。
「うわぁーい!」
「ちょっ、ベリー!? なにそれ!?」
ベリーとベルの会話が聞こえ、急いでバウムはベルの元へ行くと、そこにはなんと車に乗っているベリーの姿があった。
「ここ凄いよ! 乗り物がいっぱいある!」
そう言ってベリーが指さした方向を見ると、ベリーが今乗っている車に、バイク、そして謎のブーツがずらりと並んでいた。
「へぇ、これで街を探索出来るのか。ってことはかなり広い?」
ベルの言う通り、この街は第一階層の街よりも広く作られていた。
「このブーツは……?」
バウムがブーツを眺めて呟く。
スチームパンク風のブーツには『レンタル代2000ゴールド』と書かれている。
「バウムくんちょっと試してみてよ。私はバイク乗る」
「え、えぇ? うーん、まぁいいか……」
ベルにそう言われ、ブーツをレンタルし装備する。
「んー? 別に何ともな――」
そう言ってブーツを履いたまま一歩を踏み出した瞬間だった。
バウムの体はバネか何かで飛ばされたように宙を舞った。
「うわぁぁぁあああ!?」
「おー、フィールドで使えたら楽しそう」
ベルは悠長にそう言いながら、落ちてくるバウムを見ている。
「あああぁ! また飛んだぁぁあああ!!?」
地面に着地すると、また大きくジャンプする。
「う〜ん……あ、それ、多分だけど空中移動出来るんじゃないかなぁー!」
ベルは空中にいるバウムに聞こえるように大声でそう言ってみる。
「でもどうやって……! あれ?」
「うわぉ、ホントに?」
バウムは空中に足を着いていた。
「……よっ! ほっ!」
「おぉ! 凄い凄い!」
バウムは早くもコツを掴んだのか、空中でジャンプし移動する。
「……おっと、でも慣れてないからちょっと気持ち悪い……」
バウムはなんとか地面に降りると、そう言って口を押さえる。
この空飛ぶブーツは慣れれば凄く楽しいものとなるだろう。
「んじゃあせっかくだし街をドライブしますか!」
こうして何故か三人でのドライブが始まった。
「意外と難しい……」
「真っ直ぐ前を見るといいよ!」
ハンドルを握り、車を運転するベルにベリーが操作を教える。
「仮想世界だから免許が無くても運転出来るんだね」
一人、車の後部座席に座るバウムが言う。
「それがゲームの良いところ! 現実じゃ出来ない事が出来る、なんて素晴らしい!」
ベルは目を輝かせてそう言いながら、車のスピードを上げる。
徐々に加速していき、横の建物がすぐ通り過ぎていく。
「見よ、これが私のドライブテクニック!」
「まだ初心者でしょぉお!」
「ちょっ、ベルさんっ前!」
かなりのスピードを出していたベルは、そのまま目の前の建物に衝突した。
「…………良かった、何も壊れてない」
車も建物も、物凄い衝撃音はしたが傷一つ付いてない。
どちらも破壊不能だったようだ。
「……ベル、安全運転でね?」
「さ、さーせん……」
三人は気を取り直してドライブを再スタートした。
――ちなみに、これから第二階層に到達した他のプレイヤーたちが車に興奮して例の建物に衝突しまくるという事件が起こるのは、もう少し先の話だ。
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