第13話【いざ、新階層へ!】
「……っと、やっほーベリー、フィール」
《NGO5》の大型アップデートが終了し、早速ベリーとベルとフィールの三人で新階層である第二階層へ行こうとしていた。
「新階層ってどんなところかな!? すっごいワクワクするよ!」
「ん……でも、新階層に行くには……階層ボスを倒さなきゃ……」
そう、フィールの言う通り、新階層に行くには追加された新たなダンジョン、第一階層のボスを討伐しなければならない。
「パーティー推薦のクエストだからなぁ、三人で行けるかな?」
「うぅ、確かに……ボスってレベルいくつかな?」
ベリーの疑問にフィールが答える。
「レベルはよんじゅー、プレイヤーの最大レベルが100まで解放されたらしいから……レベル上げれば楽だと思う」
だがそのレベルはマルチでのレベルなので、同レベルでも難易度は全く違うのだ。
ソロでやるならば、レベル50はなければ難しいだろう。
「うーん、そっかぁ……私は今30くらいかな?」
「ベリーは30かぁ、私は48だけど……フィールは?」
「……52」
「もうレベル解放クエをクリアしたのか……」
レベル50からは、上限解放用のクエストをクリアする必要がある。
条件はもちろんレベルが50であること。
「どうする? ベリーとフィールが良いなら私が適当にプレイヤー捕まえてくるけど」
「つ、捕まえてくるって……ベルはやっぱりもう少し人数いたほうがいい?」
ベリーがそう聞くとベルは頷き、言う。
「そうだね、あと二人いればいいんじゃないかな? 二人共フレンドは?」
ベルがそう二人に聞くが。
「あ、あはは……私、ベルとフィールしか居ないや」
「わ、わた……私は……別に友達居ないわけじゃなくて……」
「あー、うん、わかったわかった……じゃあ、仕方ないあの侍くんを呼ぶか」
「……侍くん?」
ベルの言う侍君とはもちろんバウムの事だ、ベルはバウムと既にフレンド登録をしていた。
「おぉ! あなたは!」
「あ、君は確か、猪を切り刻んでいた……」
「ベリーそんなことを………いやそんなことより、呼んだ理由なんだけど、まあ階層ボス倒すから手伝ってくれないかな?」
「う、うん。それはいいんだけど……」
ベルに呼ばれ、ベリーとフィールとも一応フレンド登録を済ませたバウムは三人を見て言う。
「……男一人だとツラいので友達を呼んでもいいかな……?」
「あぁー、どうぞどうぞ……人数は多いほうがいいしね」
許可を貰ったバウムは早速メッセージを飛ばしてソラを呼び出す。
「はいはいどーも、ソラさんですよっと。いや~ちょうどパーティーメンバーどうするか悩んでたんだよな」
「ソラは……聖剣士職か、じゃ盾役任せた」
「おう任された。……んじゃあ、お侍の二人は俺の後ろな」
「私は後ろから弱点狙うから……フィールは高火力出せるし、私たちで作った隙を狙って攻撃していってもらえる?」
「ん……わかった」
ベルとソラが皆に指示をしている姿はまるでリーダーと副リーダーだ。
「凄いね二人とも! いいコンビだよ!」
「うっ……私のパートナーはベリーだからね~」
「俺も相方はバウムだから、こいつとコンビなんてごめんだな」
ベリーに言われ、少しお互いの距離を取るベルとソラ。
ぷいっと顔を逸らすソラに、ベルはじっと睨んで声をかける。
「……大斗、なんで距離をとるの?」
「いやいや、お前こそ……ってやっぱりお前、一条か」
「あっ……」
どうやら大斗と鈴は面識があるらしく、さらに以前ベルがバウムを本名で呼んでしまったという件もあり、気付いていたようだ。
「え、じゃあ……キミって……」
そう言いながらバウムはベリーを見る。
そう、鈴がここにいて、近くに苺に似ているプレイヤーがいる……。
つまりベリー=苺だと気付いたのだ。
「あ、ああぁ! えっと、僕です! 正樹です!」
「え、あぁ! 正樹くんだったんだぁー! いやー、髪とか色変わるとわからないもんだねー! 身長も伸びてるし……」
「ベリーさんは……縮んでますね……」
「うぅ……いいもん、敵の攻撃避けやすいから便利だもん」
ベリーがしょんぼりしているとソラが「ん?」と首を傾げる。
「んと、じゃあそこの銀髪美少女は?」
「理乃だよ、一昨日転校してきた」
「ほー、なるほどな」
ベルがソラにそう説明する。
「……ベル、ソラとなにかあったの……?」
「えーっとね、うん。中学の時にちょっとねぇ……」
「あー、あれは酷かった……」
「悪かったね、うん悪かった!」
どうやら中学時代にベルとソラは何かあったらしい。
「ねぇねぇ! ボスってどんなの?」
気まずい空気が漂いそうになった時、ベリーがそう聞くがベルもソラもバウムも知らないようだ。
「まだ情報は出てないからね。まぁボスの前に雑魚がいっぱい出ると思うよ?」
「うへぇ……そっかぁ」
いっぱい、という言葉にベリーは森のダンジョンの虫や猛獣達を思い出した。
すると、それを聞いていたフィールが言う。
「今回のダンジョンはランダム構造に……いつも違う道になってる……あと中ボスに注意」
「え、えっと……フィール? それって……」
ベルがそう言うとフィールがコクリと頷き。
「おとーさんに教えてもらった」
「えっと、そういうのって話しちゃダメなんじゃ……」
「うん、だから……おとーさんのパソコンをベランダに吊るしてこれ落とすよって脅した。まぁ……明日には公開される情報だし……有益じゃない。」
と、フィール平然とそんなことを言う。
「いとも容易く行われるえげつない行為……お父さん大変だなぁ……」
「あ、あはは……でもダンジョンの構造がランダムなら、今後の攻略法はボスの倒し方くらいしか出なさそうだね」
苦笑するベルとバウムがそう言う。
「そうだな。まぁ問題ないだろ? つーわけで、そろそろ行きますかね?」
待ちきれない様子のソラの言葉に、全員がコクリと頷く。
「よぉーっし! 待ってろ新階層ぉーー!!」
ベリーは空に向かって大声で言う。
そのせいで周りのプレイヤーからなんだなんだと注目され、そそくさとダンジョンに向かう一行であった。
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