第14話【足元に気をつけて】

「ほあ~、ここが階層ダンジョンかぁ~」



 ベリーとベルに、フィール、さらにバウムとソラの五人で第二階層に向かう為のダンジョンに来た。

 そのダンジョンは空高くまで続く大きな塔で、かなり長期戦になりそうなことを予感させる。



「なあ、これどこまで続いてるんだ? 階段で行くのか? 鬼畜ゲーだっけこれ?」


「うーん、階段を登るにしてもなぁ……これは骨が折れそう」



 ソラが青空のどこまでも、果てしなく続く塔を見上げて言う。

 そしてソラとベルの言う通り、中に入ると長い螺旋階段が上へ続いているだけだった。



「階段の幅が結構広い……もしかしたらモンスターとの戦闘があるかも知れないから、みんな気をつけて行こう」



 バウムが階段を調べて全員にそう言う。



「おっけー! よーしみんな行こー!」



 そう言ってベリーは元気よく前へ歩き出す。



「あっ、ベリー! ダンジョンだから罠とか気をつけ――」



 そうしてベルがベリーに注意しようとした瞬間に、突如ベリーの姿が消えた。



「……これ、落とし穴?」



 フィールがベリーがさっきまでいた場所に近付くと、しゃがんで深い穴を覗き込む。



「うーん、言う前に居なくなっちゃうなんて……」


「と、とりあえず……どうする?」



 と、バウムは困りながらそう言う。



「う、うぅーん……誰か、落ちたい人……挙手」



 ベルはそう言ってベリー以外の残った全員を見る。



「じゃあ……ぼ、僕が」


「お、そうだな。バウムが良いと思うぜ」


「あー、そうだね。じゃあバウムくんよろしく」



 ソラとベルはバウムに行かせることにした。



「まぁ多分どっかで合流すると思うから、足元に気をつけてね」


「わ、わかった……行ってくる」



 バウムは落とし穴に飛び降り、ベリーを探しに行った。



「じゃあ私達は探索ってことで」


「おう、了解」


「ん、わかった」



 こうして早くもパーティーが分裂してしまった。



* * *



「あ、あれぇ? ここどこぉ……?」



 ベリーは落とし穴に落ちた先、塔の地下にいた。



「う、うわぁっ……モンスター居るよー……ゆっくりゆっくり……」



 ある部屋を覗くと骸骨型のモンスターが数匹いたが特に目を惹くものは無いので、モンスターに気付かれないようにベリーはゆっくりと道を進む。



* * *



「どうしよう……ベリーさん、どこにいるんだ?」



 さて、バウムも塔の地下に落ちたのだが、どうも別の場所に転送されたらしい。



「うーん、ベリーさんなら……適当にぶらついてるかな」



 学校での苺を思い出し、バウムはベリーを真似るようにふわふわと地下をさ迷い始めた。



「……で、さ迷い始めたはずなんだけど……思いの外すぐ見つかったなぁ」


「バウムくん! 会えてよかったぁ! あれ、他のみんなは?」


「みんなは上へ向かってるよ。僕らもここを探索してれば合流出来るはず……」


「なるほど、じゃあどっちに進む?」


「え? うーん、ベリーさんはどっちがいいと思う?」


「じゃあ、バウムくんが来たほう! あと、そんな固い呼び方じゃなくてもいいからね!」



 と、まさかのバウムが来た道を選んだベリーはバウムに向かって笑顔でそう言った。



「う、うん、わかった……。じゃあ、ベリー……?」


「よろしい、では行こう!」



 そうして二人は後ろへ歩き出した……のだが――。



「えっと、扉? さっきはなかったよね?」


「う、うん……僕はこっちから来たんだし……」



 バウムが来た方向には何やら装飾された扉が出現していた。

 方向も、道も間違えていないはずだ。



「あ、そうか! 今回のダンジョンは道がランダムで構成されるからどんどん変わっていくんだ……! ベリーは運がいいね」


「えっへん! 私はラッキーガールだからね! じゃあこの扉……ボスかな?」


「いや……ボスは多分だけど塔の最上階のはずだから……もしかして中ボスとか、隠し……?」


「そ、そっか……二人だけだけど、頑張ろうね!」


「う、うん……じゃあ、行くよ」



 バウムが言った通り、ここには中ボスがいる。

 ベリーが落ちた落とし穴のトラップが残り続けたのはこれがこういうルートだからだ。

 そして、その中ボスの名は――。


「《ベフライウング・シュリュッセル》……意味は、解放の鍵……かな?」


「うわー、何か丸いねー」



 《ベフライウング・シュリュッセル》……見た目は青白く発光する球体で、真ん中には弱点と思わしきガラス玉のようなものがある。

 その球体の周りには、小さい三角形や四角形のものがフワフワと浮遊していた。



「気をつけて、多分遠距離攻撃をしてくる。僕が敵の攻撃をガードするからその内にベリーは攻撃して!」


「わかった!」



 バウムの言葉にベリーがそう返事をし、戦闘が開始される。



『ピ――ピピ――ギギギッ……!』



 球体はベリーに狙いを定めるとレーザー砲を放つ。



「【火炎斬】!」



 バウムがレーザー砲をスキルで防ぐと、それによって出来た隙にベリーが攻撃を開始する。



「【鬼神化】! てりぁぁぁ!!!」



 ベリーは頭痛を起こさない程度にスキルを連発する。

 何度も繰り返し、これでもかというほど斬り刻んだことで、敵のHPはゴッソリと削られた。



「す、凄い……」



 バウムがそう言った瞬間、HPが一気に減ったからか敵の攻撃パターンが変わる。



『ピピピピッ――――!』


 謎の機械音を発して、レーザー砲をまるで雨のように降らせてくる。



「「【絶対回避】ッ!」」



 ベリーとバウムは避けきれないと判断し、同時に【絶対回避】を発動してレーザーの雨をなんとか回避する。



「今のはもう一度やられるとまずい……! 【剣月・円斬】ッ!!」



 バウムは敵の攻撃が終わるとすぐに接近し、【剣月・円斬】を発動すると太刀を円を描くように振り、《ベフライウング・シュリュッセル》にダメージを与えた。



「私も! 【開放ノ術】! 【鬼撃】!」


 ベリーもバウムに続き、【開放ノ術】でステータスを強化してから高威力の単発攻撃スキルである【鬼撃】で追撃する。



「よし! あともう少しだね!」


「ベリー、一気にたたみかけよ――うッ!?」



 バウムの言葉を遮った理由は、突如攻撃されたからだ。



「な、なんで……攻撃モーションなんて無かったのに……」


「ば、バウムくん……もしかして、あれ……?」



 ベリーが指をさして言う“あれ”とは……それは球体の周りを漂う三角と四角の浮遊物体だった。

 それにも真ん中にガラスのような弱点らしきものがあり、そこが熱を帯びたように発光している。

 どうやらそこからレーザー砲を放ったようだ。



「ベリー! まずはあれを倒そう!」


「了解! 【剣ノ乱舞】!」



 ベリーは高くジャンプして浮遊物体を捉えると、連続攻撃スキルで攻撃する。

 小さい浮遊物体はベリーに斬られ、次々と光となって消えていく。



「【烈斬】!」



 バウムも同じように連続攻撃スキルで複数体撃破していくが……。



「よし! 減ってきたよ!」


「このまま……っていうわけにもいかないのか……!」



 バウムは球体を見上げて言う。

 周りに漂っていたモンスターを全て倒したと思ったら、本体、《ベフライウング・シュリュッセル》は強く発光し――。



「う、うそぉ!? 変形したよぉ~!」



 球体に三角や四角がカチャカチャと磁石のようにくっつきだして、しばらくすると球体は巨大なロボットへ変貌を遂げた。



『敵ヲ、最大出力デ……排除シマス!』



 ――しかも喋った。

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