第6話【PK集団さんと出会いました!】
《ザ・ブラウリッター》との戦闘を終えたベリーが第一階層の街に戻ると、ちょうどベルがログインするのが見えた。
ベリーはベルの姿を見るやいなや、まるで主人を見つけた犬のように駆け寄る。
「おーい! ベル~!」
「ベリー! どう? いいスキルとか見つかった?」
「うん! バッチリだよ!」
【鬼神化】はスキルの連続使用にだけ気を付ければ頭痛も起こらないはずなので、ベリーもかなり強くなっただろう。
というか、ゲームを始めて間もないのにここまで成長出来たのは本当に運が良かった。
「じゃあもうイベントまで待つ感じかな?」
「うん、そうだね! とりあえずこれで挑むよ!」
「よしよし、その意気だ! ……あ、でももし私とデュエルすることになったら遠慮なく潰すからね?」
「え、ベルと戦うの!?」
「も、もしもの話ね。まぁそうそう当たらないよ」
「そうだよね……うぅ、ベルに勝つなんて出来なさそうだしそうであってほしいよ……」
「そう? ベリーも充分脅威だけどね~。一回くらいは本気でぶつかってみたいかも!」
好奇心からなのか、元気よくベルは言う。
だが反対に、ベリーは心の中で「絶対にベルと当たりませんように!」と強く祈っていた。
あの射撃能力を間近で目の当たりにしたベリーにとって、その辺のボスモンスターよりもベルの方が厄介だと思わざるを得なかったのだ。
* * *
その後、ベリーとベルは街からフィールドへ移動する。
草原、そして森林フィールドを抜け、大きめの遺跡にやって来た。
遺跡にはゴーレム系のモンスターが出現する。
その中に《ゴールド・ゴーレム》というモンスターが低確率で出現する。
《ゴールド・ゴーレム》と言うのだから、当然討伐するとゴールドが手に入り、換金アイテムもドロップする。
つまり金策モンスターだ。
「うーん、やっぱり銃は効きにくいなぁ……」
そう言いながらベルはゴーレムの胸の辺りにある、弱点の宝石を撃つが、やはりダメージは低い。
硬い岩のような素材で造られたゴーレムに、銃弾は弾かれてしまうので効果が薄いのだ。
「任せて! ――【鬼神化】!」
そこでベリーが【鬼神化】を発動し、ゴーレムを攻撃していく。
ゴーレムのHPはゴリゴリと凄まじい速度で削れていき、すぐに光の粒となって消える。
「な、なにそれ……なんで角あるの……」
「鬼神だからね!」
「神……いや鬼になったのか………」
そう言ったベルは遠い目で空を見上げた。
新しく手に入れたスキルがどんなものか気になっていたベルだったが、見たことも聞いたこともないスキルに立ち尽くして眺めることしか出来ない。
「あっ! 来た! 金色のゴーレムだよ!」
「え、あぁうん……倒していいよ、私はお金に困ってないし」
ベルにそう言われたベリーはササッとゴーレムに近付くと、一瞬で倒して戻ってきた。
「凄いよベル! お金がいっぱいドロップしたよ!」
「うん、無駄遣いはしないようにねー」
「わ、わかってるよ!」
「ホントかなー?」と、食費に消えていきそうだと思いながらベルが言った瞬間、ベルの頬に銃弾が擦る。
「……ッ! ベリー気をつけて、プレイヤー狩りだよッ!」
そうベリーに伝えつつ、ガンホルダーから拳銃を二丁抜く。
「大丈夫! 銃弾は全部斬ったから!」
あれを斬ったのかとベルは一瞬固まるが、そんなことしている場合ではない。
急いで敵の数を確認する。
「……三、四……四人か。暗殺職が二人に、剣士職が一人……んでもって《狂戦士》……うわぁ、厄介だなぁ」
《暗殺者》と《剣士》はどうにかなる、だが上級職である《狂戦士》が少し厄介だった。
なぜなら、《狂戦士》は攻撃系スキルが強力な上に、攻撃力を強化するスキルもある。
さらにHPが高く、アタッカーとしても、タンクとしても使える職業だ。
だが動きが鈍いので、攻撃に当たらなければ問題ないが……ベリーとベルは素の攻撃力が高いわけではないので、少しずつHPを減らしていくしかないのだ。
「ベリーは《狂戦士》の方をお願い、この三人を片付けたらすぐ加勢するから!」
「わかったよ! さぁ来い!」
そうしてPvPが始まる。
……だが、もしもこの四人のPK集団がこの二人に会っていなかったらどれほど幸せだったことか。
《暗殺者》のプレイヤーの二人は自分が殺す側じゃなく殺される側だということを思い知らされ、《剣士》のプレイヤーは震えて死を待つのみとなった。
《狂戦士》のプレイヤーの方も攻撃が全く当たらず、ベリーにちまちまとダメージを入れられていた。
「よし終わりっ、ベリー大丈……夫だね。待ってて、今終わらすから!」
ベルはそう言って二丁拳銃から狙撃銃、スナイパーライフルへ変化させ、《狂戦士》のプレイヤーの頭を狙う。
「貫通弾装填っと……んじゃ、バイバーイ!」
「んなッ!?」
《狂戦士》のプレイヤーはベルに気付くと咄嗟に大剣を持ち上げて頭をガードするが、放たれた銃弾は分厚い刃を貫通し、プレイヤーの頭を撃ち抜いた。
「ふぅ……ちょっと焦ったけど、私たちと相性が悪かったね」
そう言ったベルはスナイパーライフルを二丁拳銃に戻して、再びホルダーに収納する。
「ねぇねぇベル、経験値が結構貰えたよ?」
「あー、PK……プレイヤーキルは経験値が集めやすい設定になってるからね。PKは別に悪いことじゃないんだけど……まぁあんまりしないようにね?」
「し、しないよ! でも、イベントの練習になって良かったよ!」
「あ、確かにそうだね! ベリーがイベント前に対人戦を経験出来たのは大きな収穫だよ。じゃあこの調子でイベントまで出来ることをしよっか! まぁ今日はアイテム売ったらログアウト」
「りょーかい!」
突然の対人戦闘に勝利した二人は街に戻ると、換金ショップに立ち寄ってアイテムを売り、明日に備えてログアウトしていった。
* * *
一方その頃、あの四人のプレイヤー達は拠点に戻され、つい先程の戦闘を思い返していた。
「なんなんだよあのプレイヤー!」
「あぁ、あんなのチートだろ! 命中率どうなってんだよ!」
と、《暗殺者》の二人が言う。
《剣士》のプレイヤーも「ヤベーよ、あいつらヤベーよ」とうつむきながら呟いていた。
「ハァ……。お前ら! 確かにあいつらは強かったが、次は負けねぇ。レベル上げてからリベンジするぞ!」
リーダーである《狂戦士》のプレイヤーがそう言ってリベンジに燃えると、他の三人のプレイヤーもやる気が出たようで雄叫びを上げて士気を高め、四人は颯爽とフィールドへ向かっていった。
* * *
「もうすぐイベント……楽しみだなぁ」
今回のイベントはサービス開始から第二回目のイベントなのだが、苺がゲームを始めたのは第一回イベントが終わった頃なので、苺にとってこれが人生初のゲームイベントだった。
「よぉーっし、絶対勝ってやるぞー!!! ……その前に宿題に勝つぞぉ……」
そう意気込んだ苺は、その日はすっかり忘れていた宿題を急いで進めるのだった――。
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