第3話【幼馴染の実力が凄いんですが!?】
初プレイから翌日、学校で苺は昨日の事をゲームを紹介してくれた幼馴染の鈴に話していた。
「それでね~、そのお爺さんがね~!」
「ちょ、ちょっと待って。何そのクエスト……」
「うん? 将棋でお爺さんと対局するクエスト……?」
「そ、そう……よ、よかったねー」
鈴にとってこれは予想外だった。
そんなミニゲームがあるなんて今まで知らなかったのだ。
予想外ではあったが、苺は昔からそういった“隠されているもの”を見付けるのが上手かった。
そして、そんなことを話しているとクラスメイトの女子が苺を呼ぶ。
「八坂さーん! お呼びだよー!」
声の方向を見ると、手を振って呼ぶクラスメイトと、身長は苺より低くはないが小柄な男子生徒が立っていた。
「えっと……君は?」
「あ、え、えっと……隣のクラスの
「わぁ、わざわざありがとね正樹君!」
「い、いえ……それじゃあ僕はこれで……」
そう言って足早に自分のクラスへ戻っていった。それを見送って苺も鈴の所へ戻る。
「ほほぉ~? あの子は?」
鈴がニヤニヤしながら苺に聞く。
「うん、隣のクラスの正樹君だって」
「あ、え? 面識は?」
「うーん……会ったことあったっけ?」
「え? じゃあなんで?」
「このプリントを届けに来てくれたの」
そう言ってプリントを鈴に見せる。
「えーっと? あぁ、委員会のか。正樹君は苺の委員会の委員長なんじゃないかな?」
「……はっ!? 言われてみれば! うぅ……今度謝ろう……」
申し訳なさからシュンとなっている苺に鈴が苦笑すると、ふと思い出したかのように言う。
「あ、そうそう、今日は私、ログイン出来るよ!」
「え、本当!?」
「う、うん。なんか……かなりハマったみたいだね」
「うん! 凄く楽しかったよ!」
そう言って苺は目を輝かせている。
本当に楽しかったらしい。
「よぉし、じゃあ今日は私のプレイスキルを見てもらおうかな?」
「おぉ! やったぁ!」
* * *
放課後、家に帰ると早速ログインする。
待ち合わせ場所である街の中央広場に行くと鈴らしきプレイヤーが待っていた。
「あ、おーい! す――っと危ない危ない……危うく喋ってしまうところだった」
本名などの個人情報は他人にバラしてはいけない、ゲーマー……いやネットなどを使うなら常識中の常識だ。
「危ないかったね、えーっと……ベリー」
「う、うん。ごめんね、えっと……」
ベリーはキャラクターのネームが表示されてる頭上を見る。
「へぇ……“ベル”ちゃんかぁ」
「まぁ、鈴だからね」
鈴、もといベルは頬を少し赤らめ、短めな金髪のポニーテールを揺らして言った。
そんなやりとりをした後、二人はフレンド登録を済ませ、早速フィールドに出る。
「今の最大レベルは50なんだけど、まぁまだ発売したばかりだから高レベルプレイヤーでもレベルは30くらいかな?」
「そうなんだぁ、ベルは?」
「私は28だよ、ベリーは?」
「私はねぇ……5だよ!」
「ほら!」と元気よく笑顔を浮かべながら、ベリーはベルにステータス画面を見せてくる。
[ベリー]
レベル5
HP/40
MP/20
攻撃力C 防御力C+ 俊敏力C 魔力E
会心率B 生命力D トータル156
装備:初心者の刀、初心者の服
治癒の指輪(HP自動回復)
スキルリスト:【絶対回避】
ベリーのステータスを見たベルは小さく頷く。
「うん、【絶対回避】は良いスキルだよ。私もそれ選んだし……この《治癒の指輪》って言うのは?」
「将棋のお爺さんから貰ったやつだよ! えぇっとアイテム説明は……っと!」
ベリーはそう言って《治癒の指輪》の説明文を出してベルに見せる。
《治癒の指輪》は毎秒、ほんの少しだけだが、HPを自動で回復させるものだ。
「へぇ、ミニゲームの報酬にしては結構使えそうだね」
「うん! ……ところで」
そう言ってベリーがベルの姿をまじまじと見る。
「な、なに……? リアルとあんまり変わらないはずだよ?」
「うん、リアルと同じで可愛いよ! 金髪も似合うね!」
ベルのキャラクターは現実よりほんの少し身長が高い。
そして髪は現実と同じ短めのポニーテールヘアーにしていて、色は夕陽のような金髪になっていた。
「もう……ベリーは少し小さくなった?」
「そ、そんなことないよ!」
いや、そんなことあるのだ。実際にベリーの身長は現実より2cm近くも下がっていた。
「あはは、ごめんって……あ、ほらモンスター来たよ!」
ベルが猪型モンスターの親玉のような大猪に気付く。
牙がかなり大きく、牙だけでベリーの身長に届きそうなくらいだ。
「こ、これ……倒せる?」
「大丈夫大丈夫、見た目は確かに強そうだけどレベルはそんなに高くないから、まぁ見ててよ」
そう言うとベルは二丁のハンドガンを手にする。
「え? なに……? それ……?」
「一応、上級職の《暗殺者》。手数が多いし、素早い動きも出来たり、状態異常の攻撃も得意とする結構人気の
よく見るとベルの腰にはガンホルダーの他にナイフが数本ある。
ベルは説明を聞いて呆然としているベリーを横目に、大猪に弾丸を撃ち込んでいく。
「これの最大の特徴は様々な銃を使えるってことなんだよ。一つの銃を手に入れればそれと同じシリーズの他の銃に切り替えることが出来る……まぁ全部違うシリーズを使う人も居るけどね」
そうベリーに説明しながら片手の銃で大猪に攻撃している。
標的を見ていないのにも関わらず、全て大猪の弱点部位に当たっている。
「す、凄いね……見てないのに……」
「まぁゲームだし、多少アシストされてるからねー」
アシストされているとしてもここまで正確に撃ち抜ける者はベルのようなVRゲームに慣れた者か、実際に銃を扱ったことがある者くらいだろう。
ベルの場合はほとんど才能だが。
「よし、トドメ!」
そう言って、素早く武器を二丁拳銃からスナイパーライフルに替えると、一瞬で狙いを定め、最後の一発を撃つ。
『ボォォウゥ……』
大猪は弾が当たった瞬間残りのHPが0になり、光の粒となって消えた。
「いえーい!」
「ベルすごーい!」
ベルのプレイを見たベリーは自分も鮮やかに素早く一瞬で敵を仕留めるカッコいい女侍になりたいと思った。
最も既に素早く敵を切り捨てることが出来るのだが。
「じゃあ次はベリーの番ね、さっきのモンスターを狩ってみて」
「え、えぇ!? む、無理だよー!」
「大丈夫だって! イザとなったら私が撃つから」
「うぅ……わかった」
ベリーは渋々ともう一匹の大猪と対峙する。
「【絶対回避】……っと、これでよし!」
予め【絶対回避】を発動させ、刀を構える。
「よし来い!」
それを合図に大猪が突進してくるが、それをベリーはスルッと交わす。
【絶対回避】の効果は発動していない。
「てや! せいやぁ!」
攻撃力が低いのでダメージ量も低いが、確実にダメージを与えていく。
すると、大猪が範囲攻撃の牙を振り回す攻撃をしてくるが……これもベリーはなんとか避ける。
今のベリーの俊敏力はそこまで高くないので決して素早くはないのだが、それでも敵の攻撃をよく見てしっかり避けていく。
「こ、これは……ベリーも充分凄いよ」
ベルがベリーの乱舞を見ていると、いつの間にか大猪が光の粒になって消滅していた。
「お、お疲れベリー」
「ハァ、ハァ……お、お疲れぇ~!」
ベリーは全ての攻撃を避けてさすがに疲れているようだ。
「一旦街に戻ろうかね」
「すぅ~……はあ~………っと、そうだね!」
ベリーは深呼吸をして呼吸を整えると、二人は街へ向かって歩き出した。
* * *
街に着くとちょうど二人にメッセージが届く。
どうやら運営からで、何かの告知のようだった。
「えっと? 『来週PvPのイベントを開始します』……へぇ、第二回イベントはPvPかぁ」
「ぴ、ぴーぶいぴーって?」
「プレイヤーVSプレイヤーのことだよ、今回は一対一のデュエルだね」
こういったイベントではレベルは全員50固定だが、スキルと装備は変わらない。
「どうする、参加してみる?」
そのベルの問いにベリーは迷わず答える。
「する、参加する! 何か燃えるよね!」
「よし、じゃあレベル上げはとりあえずいいから……スキルと装備を強化しようか!」
「了解です!」
そうしてビシッと敬礼して答えたベリーはその日、ベルから必要そうなスキルや装備の入手方法を教えて貰い、8000ゴールドほど頂いた。
「お、お金までくれなくても……」
「ベリーは初期資金を全部食べ物に使っちゃったからね……今度はそれでちゃんと装備買いなよ?」
「わ、わかってるよ……!」
「じゃあ私は今日はログアウトするね」
「うん、また明日ね!」
「はいよー、またねー」
ベルがログアウトしたことでアバターの姿が消え、ベリーは一人になる。
「装備を選んだら私もログアウトしようかな?」
そう言ってベリーは装備屋に向かう。
ベルのチュートリアルのおかげで街の地図はもう全部把握していた。
「おぉ、いっぱいあるなぁ! まずは弓かな?」
初心者には購入しやすい弓を購入し、防具も適当に購入する。
「よし、猪さん倒してレベルアップしたからステータスも上げておこう!」
ステータスをじっくり眺め、手早くポイントを入れていく。
このゲームのステータスはF~Sのランクで表示されている。
そこにポイントを入れて一定値に到達するとそのランクが一段階上昇する、という仕組みだ。
「うーん……こんなんでいいのかな?」
[ベリー]
レベル10
HP/85
MP/50
攻撃力B 防御力C+ 俊敏力C 魔力E
会心率B 生命力C トータル196
装備:初心者の刀、オーガの弓、オーガの着物
治癒の指輪(HP自動回復)
スキルリスト:【絶対回避】
「このオーガの装備カッコいいから買ったけど意外と高かった……刀買えなかったよ……」
そう言って少しガッカリするベリーだったが、最後に鏡で自分の今の姿を見ると満足し、その日はログアウトしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます