モノクロの世界で、感情が混ざっていく。
第1話
「杏子、お風呂沸かしていい?」
「うん、お願い」
陽菜たちと、レストランで過ごして、
蒼馬が服を着換えながら、
「なあ、あの2人を一緒に帰らせてよかったのか?」
「いいんじゃない。陽菜もあの変態男の河野健介と別れたんだから」
「ああ、男と別れたことは別にいいんだけど…」
蒼馬が隣に座った。
「何?
「まあ、それもあるけどさあ…陽菜ちゃんに結婚の話もできなかったしさ。」
また紺来くん。杏子は嫉妬のような感情が湧いてしまう。今日も3人で会う予定だった。でも、蒼馬は紺来くんの誘いを断れず。4人で会うことになってしまった。「ごめん。結婚の話ができるタイミングがつかめなくて。。。」
蒼馬は杏子の頭を軽くポンと叩いて
「まあ、今日は確かに結婚の話をするには難しかったかもな。ごめん、紺来を連れてきてしまって」
蒼馬はソファから立ち上がってキッチンの方に行ってしまった。蒼馬がスリッパで歩く音がポンポンと聞こえてくる。
「コーヒー飲むよね」
コーヒーメーカーを動かす音が聞こえてきた。ドリップコーヒーを飲みたいと蒼馬が1週間前に買ってきた少し大きなマシーン。毎日、楽しそうにコーヒーを作っている。
もうすぐ、蒼馬と付き合って1年になる。10月の教員採用試験の合格発表の日、もし合格していたら、「結婚しよう」とプロポーズされていた。そして、見事、合格できた。
だから今日、来年の2月14日に籍をいれることを伝えるつもりだった。タイミングを完全に逃してしまった。
紺来くんも居たことで、タイミングがつかめなかったのもあったのかもあしれないが、杏子はそうではないとわかって
でも陽菜の様子がいつもと違うことが一番の原因だった。たぶん、河野健介と別れたことで、何か変わったのだろう。それが気になって、結婚の話をすることより、何かあったかを聞きたくてしょうがなくなっていた。何でも、すぐに話してくれた陽菜から何の相談もないことに、杏子はモヤモヤして気持ちがおさまらなかった。
「どうするの?今度も一緒に行った方がいい?」
「ううん、大丈夫。陽菜と2人で会って聞きたいこともあるし」
「そう。」
蒼馬が2つのカップを置いた。そして後ろから、ぎゅっと抱きしめられる。
「まあ、それならいいけど」
「うん」
蒼馬の温もりが全体に伝わって安心感を包んでくれる。
「はい、冷めないうちに、どうぞ」
カップから湯気がユラユラ上がっていくコーヒーの香りが広がる。蒼馬は、杏子がブラックコーヒーが飲めないので、ミルクを入れてカフェラテにしてくれた。蒼馬は隣に座って、ドリップコーヒーをじっくり飲み始める。
「まあ、
「紺来くん?」
「陽菜ちゃんには悪いけど、あいつは無理だろう。」
蒼馬が少しトーンダウンした声で言う。それがなぜか少し怒っているように杏子は思えた。
「過保護だね」
「過保護!? どこが!!」
カップのコーヒーを一気に飲みほした蒼馬。
「すねないでよ」
ピーピー、お風呂が沸いたお知らせが鳴る。
「ああ、先に風呂に入って来るわ」
「うん」
スタスタとお風呂に行ってしまった。蒼馬はいつも紺来くんに気を使っている節があった。誘われたら絶対に断れないのだろう。デートでも、たまに紺来くんが来ていることがあった。それに蒼馬はいつも杏子がいることを紺来くん伝えていなかった。なので、紺来くんに毎回『ごめん、蒼馬から居るって聞いてなくて』と謝られる。そして気まずい空気が漂ってしまう。別に、紺来くんは嫌な人ではない。でも、どこか独特な雰囲気を持っていて怖さもあった。
スマホの画面を光っていた。夜の11時が過ぎていた。「今日はありがとう」と陽菜からLINEが届いた。それ以上の文章はなかった。あの後、2人がどうなったかを教えてはくれないようだ。
人妻としか、関係をもとうとしない紺来くん。不倫を繰り返すたびに、蒼馬はどこか怒っている。いつも、杏子に「本当に好きな人作った方がいいのにな。ちゃんと1人の女性を好きになった方がいいよな」とぼやいてくるくせに、紺来くん本人には何も言わないのだ。そのよそよそしい男性同士の関係がよく分からなかった。
「上がったよ」
「うん、私も入る」
杏子が部屋に戻ると、すでに蒼馬はベットで寝ていた。電気を消して、布団の中に入ろうとすると
「ねえ、陽菜ちゃんの元カレってどんな人だったの?」
「まだ、寝てなかったの?」
「うん、まあ」
「河野健介のこと?」
「うん、そう。どんな人?」
「う~ん、どんな人って聞かれてもよく知らない。ただ、いい噂を聞かない人かな。」
あまり話したくない内容が多いので蒼馬には言いたくない。
「でも、杏子が嫌いだよね」
「まあ、そうだね。自分の思い通りに他人を動かしたいような人な感じがして苦手なんだよね。」
下着の盗難やスーパーなどでも盗難をしたとかは言えない。陽菜はどこかそれを黙認して、見て見ぬふりをしてるようだった。それに、杏子も下着を盗難されたことがある。あまり思い出したくない人間だ。それに蒼馬に下着を盗まれたことを話すつもりはない。絶対に知られたくない。
「思い通りとは、紺来とは真逆だな。」
「そうなんだ。」
蒼馬は振り回されてるイメージはあったが、怒られそうなので言わなかった。
「うん、もう寝よう。おやすみ」
何か気になってしまったのか、蒼馬は向こうを向いて寝てしまった。
「おやすみ」
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