第2話 猛火

健は付き合うときに、童貞ではないと言った。


私は、「そんなの気にしないよ〜」とは言ったものの、彼女がいたことがないのに卒業していることは気になった。


その上、セックスが上手いことも気になった。


勿論、私も恋人ではない男性とセックスしたことはある。


そして、私が過去に経験したのは、童貞が3人と、そうでない人が3人で、後者の中で付き合った人とは長く続かなかった。


そういったことがなんとなく不安で、すぐ別れてしまうんじゃないか、浮気するんじゃないかと思ってしまう。


今まで何人の女性としたんだろう。


魔が差したらどうしよう。


そんなことを考えていたら、虚無感が私を襲い、私が私を認識できなくなった。


「どうかした?」


「…ううん、何でもないよ。」


必死に下半身へ意識を戻し、陰部を舐める彼を見つめた。


丁寧に舌を這い、時々「気持ちいい?」と確認する健を見ていると、不思議な気持ちになった。


例えばショッピングで、お目当ての物が買えたら「帰ろう」と言う。


そして私が「もう少し一緒にいたい」と言っても、帰ってしまう。


そんな彼が、なぜ私をしつこく求めるのか。


私の性欲も、置き去りにしないのか。


単にセックスの優先度や幸福度が高いのはわかっているが、それでも不思議だったし、嬉しくなった。


「舐めてほしい。」


健は体勢を変えながら、物欲しそうに言った。


私もいよいよ堪らなくなり、一心不乱に咥えた。


私が男性器を始めて口にしたのは中学3年のときだったため、それなりに自信はある。


これ以外はあまり得意ではないが、咥えているときだけは、私も彼を気持ちよくしていると実感できて安心する。


「あー、出ちゃうからもういいよ。」


健は私から離れ、ゴムへ手を伸ばした。


私は、相手が装着しているときは相手を見ないと決めている。


見られていると、高確率で装着に失敗することを知っているからだ。


だからこの間は、健が萎えないように軽く愛撫したり、大人しく待っていたりする。


期待に胸を膨らませて…。


「…うん。」


健が振り向き、私を優しく押し倒した。


軽くキスをし、私を見ながら挿入する。


「やっ…。」


少し乾いた陰部に押し込まれると、初めは苦しいが、徐々に健を受け入れられるようになる。


この、少しずつ彼と合致していくのが嬉しい。


そして、安心しきった彼が身を委ね、激しさを増し、私を支配しようとするのがもっと嬉しい。


「あっ…!あんっ…。」


私たちは燃え上がる炎のように、互いに互いを、火の渦へと引き摺り込もうとした。

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