束の間の熱情
ミエ
第1話 発火
平日の午前11時、サラリーマンを横目に私たちが向かったのはラブホテルだ。
さすがに空いてるだろうと思ったけど、案外混んでいて、一番安い部屋はあと一部屋だった。
私たちは平然を装って部屋を選択し、料金を支払い、3階へ上がった。
「眠ー。」
だったらこんなに、朝早くなくてもいいじゃないか。
付き合って二ヶ月の彼は合理的な人で、私にとって初めての理系彼氏だ。
彼にとって私は、初めての彼女だそうだ。
11時から20時までのサービスタイムは長く安くいられるため、セックスはあらかじめ約束してする。
いい雰囲気になったからホテルに向かうのではない。最初はそれがとても違和感だったけど、今はもう慣れた。
部屋に入り、荷物を置くと、健は後ろから抱きついてきた。
「あーー、我慢できない。」
健の荒い吐息を耳で感じ、私も段々と欲情してきた。
「んっ…。」
私たちは待ちきれず、引き寄せられるように濃厚なキスを始めたが、暫くして健の方からサッと離れた。
「野球拳、しよう。」
「えっ。」
ここは合理的ではないんだな、と思った。
まあ私も、焦ったい方が好きなので嬉しかった。
「最初はグー、じゃんけんポンッ。」
負けた。
「
「えー、どこから脱げばいいの?」
「そこは任せますよ。」
仕方なく、私はスカートを脱いだ。
「じゃんけんポンッ。」
また負けた。
「えー、またあ?」
今度はシャツを脱いだ。すっかり下着姿になってしまい、明るい部屋で自分だけが恥ずかしかった。
「恥ずかしいっ…。」
健が全身を舐めるように見ている。頭の先から爪先までが火照ってきた。
「うん、もういいや。」
そう言うと、健は私に覆い被さり、無我夢中にキスをした。
肉を前にして我慢を強いられた猛獣は、やっと食らいつけた獲物を逃すまいと必死に押さえつける。
私は……普段あまり感情を表に出さない彼がセックスで見せる動物的な姿にいつも興奮してしまう。
そして、胸や陰部を刺激されるのも好きだが、彼の吐息、唾液、喘ぎを間近に感じられるキスが堪らなく好きだ。
私たちの中で火が灯り、それと同時に部屋の明かりは消えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます