戦略は嘘。炎上する小説。

エリー.ファー

戦略は嘘。炎上する小説。

 どうしたら炎上を回避できるのか考える

 そして、小説を売る。

 考えるしかない。

 編集者として、漫画家に良い思いをしてもらいたい。漫画家になって良かったと本気で思ってもらいたいのだ。

 だから。

 殺してみるか。

 誰か殺してみるか。

 話題にはなるはずだ。

 編集者が殺人。

 いや、私の担当する漫画の名前まで記事に載るか。載るわけないな。うん、駄目だ。この作戦はないな。

 でも、他にインパクトのある戦略なんて思いつけるのだろうか。今のが、最高で、極上で、最強だったように思う。

 やはり。

 殺すか。

 妻も娘もいる、この社会的に上手くいっている感じをだしつつ。

 殺すか。

 サイコパスっぽさは大切な気がする。

 娘の首を切り取って、その断面を舐めてみるか。動画にして、投稿して。

 いや。待てよ。

 私。

 ベジタリアンだ。

 よくないぞ、それはさすがによくない。

 冷静に考えれば、妻に滅茶苦茶怒られるに決まっている。娘を私以上に大事にしているのだ。もはや、私などゴミ同然なわけで。

 待て待て。

 もう、私はゴミなわけだ。つまり、これより下へと落ちることはない。

 殺し得か。損はないんじゃないのか。

 でも。

 そもそも、殺人っていけない行為だしな。やってはいけないものをやるのは、社会においてはよくないから、社会から出てしまえばやってもいいと考えられる。のか。

 待てよ。

 社会を捨てればいいのか。

 あぁ、なるほど。

 殺人、できるなあ。

 漫画が有名になるなら、編集者としては最高じゃないか。仕事人として完成したと言える。

 じゃあ、殺人をする時に叫べばいいのか。漫画のタイトルを。

 でも。

 ラブコメだしなあ。

 あんまり宣伝の方法と作品の内容が合ってないんだよなあ。唯一、死んだ人はヒロインのお父さんで、しかも病死だから血生臭さからは程遠い。

 ということは、だ。

 作品に死体を登場させればいいんだ。そうか、殺人事件を起こして、ちょっとスプラッタ表現も混ぜてしまえばいい。そうすれば、宣伝と作品が合致する。

 なんで考えつかなかったんだろう。

 私の考える完璧な宣伝に作品を合わせればいいんだ。

 こっちがこんなに売ろうとしているんだから、漫画家側も足並みを合わせるべきに決まってる。そうだ。これが正解だ。間違いない。私は間違ってない。絶対に正しい。必死に考えて編み出した方法なんだから正しいに決まってる。

 編集長がやってくる。

「おい、会議を始めるぞ」

 何を言っているんだ、こいつは。

 今、私が完全に思考をバーストさせて戦っている最中なのに、水を差しやがって。

「うるさいっ、死ねっ、死ねっ」

「おっ、どうした急に」

「お前みたいな、何にも考えてないっ、昔担当した漫画家がたまたま当たりだった程度のバカの指示なんてきかないっ。凄い編集者になってっ、凄い結果を出すんだっ。いいかっ、めっちゃ凄いんだぞっ」

「本当に大丈夫かお前。休んだ方がいいんじゃないのか」

「大丈夫だぁっ。頑張ってるんだぁっ」

「今日の会議は休んでいいぞ」

 最高の編集者だからこそ、仲間外れにされる。よくある話だ。きっと、会議では私のことを天才だと噂しているに決まっている。

「うおおおおおっ、殺人で宣伝するぞおっ。漫画家っ、漫画っ、文化っ、最高っ、ほほっ、ほうっ、最高っ。ペペぺっ」

 どうせなら、漫画家になっちゃおう。

 私が描いた方がいい。

 だって、編集者としてなんでも見てきて、なんでも読んできて、なんでも知ってるんだから、最高漫画が描けるに決まってる。

「いけるうっ。編集者パワー最高っ、おほっ、ぷぶうぅっ。いけるっ、いけるっ、編集者天才パワー、オンオンっ、うんっ」




「頑張ってるのは分かるけど、マジであれと一緒にしてほしくない」

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