第43話 月が昇るまでに(14)
「
「美人は美人でたいへんだね」
言って、
「ところでさ、次の
「ああ」
真結は少しあらたまった言いかたをした。
もしかすると、相瀬さんには受け入れてもらえないかも知れないと思ったからだ。
「お
「ああ!」
相瀬はふいに大きい声を立て、ふっ、と唇を押さえる。
それで、抑えた声で言う。
「いい子でしょ? だいぶ変だけど、でもいい子でしょ!」
「うん……」
意外だ。
「でも、なんで相瀬さんが知ってるの?」
「だってさ」
相瀬は得意そうに笑った。
「あの
「はいっ?」
「新野」というのは、あの
でも、「新野ちゃん」って……。
――どうして「ちゃん」づけ?
目をぱちくりさせる。
ないことにしておこう。
「相瀬さん、じゃあ……?」
「知ってるんでしょ? あの若君っていうのを殺して崖から身を投げたっていう……」
相瀬という女!
それはやっぱりこの相瀬さんだったのだ。
相瀬さんは相良讃州の屋敷に新野姫に仕える女として入りこんだのだろう。
しかも、相瀬さんは新野姫を「新野ちゃん」と呼んでいる。
讃州が愛したという新野姫は、最初から相瀬さんと心を許しあっていた。
相瀬さんはもちろん、新野姫も讃州を破滅させようとしていたのだ。その新野姫と相瀬さんを、相良讃州は信じて疑いもしなかった。
讃州に
「はァ……」
まずはそんな声しか出ない。
相瀬さんはことばを続ける。
「あのときさ、ずっと待ち伏せしてたのにさぁ、あの
「やっぱりそうだったんだ?」
「あいつが讃州の息子だってこと? そうだよ。まちがいない」
「あ、いや」
そのこともきいてみたいけど。
「そうじゃなくて、あの若い殿様を殺したのが相瀬さんだっていうことが」
「うん。それで、みんな刀抜いて追っかけてきたから海に飛びこんでさ、
「でもさ」
そんなはずはない。
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