第40話 月が昇るまでに(11)
あたりは「墨を流したような」と言っていい闇だ。空も曇っている。
ただ、自分が水を
そのほうが、これからやることにとっては都合はよい。
それと――と、あのとき自分が危うく溺れかけ、
けれども、一連の変事の経緯を記したものは、
そして、その公儀の文書には、
これほどの不始末は支領の領主としても見過ごしてはならないはずなのに、
もっとも、見過ごすも何も、岡下という小さい一つの街を支配するだけの支領の当主に、多くの奉行・役人を配下に収めて本領の隅々までその権勢を及ぼしていた
しかも、大膳は、相良讃州が玉藻姫の行方を調べるために役人を岡下領に入れようとしたとき、断った。がんばりはしたのだ。
だが、お上の理屈は、「やってみたけど無理だった」ではすませられないものらしい。
それで「相瀬」という女は岡平のお家の文書のどこからも姿を消した。
それとともに、あの別院から禁制の浜の沖までのあいだいっしょだったたけだけれども、たしかに真結が会い、ことばを交わしたあの愛くるしいお姫様は、二重に殺されてしまった。
あのお姫様がなぶり殺しにされたなどというのは、真結にとっては思い出すだけで身を
でも、それはそれとして文書に残しておいてほしかった。
けれども、それも残らなかった。
玉藻姫というお姫様は、
相良讃州については、
でも、それだけだった。
ひとたび、悪政が行われると、それを元に戻すにはこれだけの犠牲が必要だ、ということなのだろう。
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