第39話 月が昇るまでに(10)
ところで、これだけの不始末が続けば、お家断絶、領地は
しかし、公儀のほうもできれば穏便に済ませたい事情があった。
五十年あまり前には、領主家を取りつぶしたところ、浪人になった者たちが
今回はそういう不祥事が起こることは避けたかった。また、他の公儀の所領や領国でも
そこで、公儀は、支領の
岡下の殿様は、
岡下の当主であった
もと主膳の新刑部が、みじめに殺された
その新しい若い奥方は「
また、温和な人柄で知られた岡下の大膳も、出家した後も、若い殿様の後見として、領内の政に与った。
もちろんそれで万事がうまくいったわけではない。
相良讃州が定めていたあまりに高い年貢は下げられたが、それは領主家の
讃州が領内に移住させていた武蔵・
いまさら追い返すわけにはいかない。
しかし、相良讃州に追い立てられたもとの住人は、もとの村に戻りたいと訴え出る。
泉大膳が家老たちと相談して決めたのは、まず、そのもとの住人を追い立てる役目に関わった当時の役人を徹底して調べ、厳罰に処するということだった。それと引き替えに、もとの住人の村への帰還はあきらめさせた。かわりに、城下で商売を始める者には低い利息で金を貸すとか、新しく田畑を開けば年貢を安く抑えるとかいう策をとった。
しかしもともと海辺で漁をしていた人たちだ。畑を作れ、商売をしろと言っても、ずっと祖先から畑を作り商売をしてきた人たちにかなうわけがない。また、もう同じ仕事をしている人たちのなかにあとから割って入るわけだから、紛議も起こる。不満は残った。
そのたびに領主家がどちらかを
その結果がどうなるかは、まだわからない。
相良讃州が連れて来た領外の人たちといつの間にか一つの村になってしまったのは
それはどちらの村も海女漁をやっていたからだ。
まず仲よくなったのは海女どうしだった。
だから、それは、唐子のもとの村と
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