21.電話越しに伝えた想いは50%

 キーンコーンカーンコーン……


 現在の時刻、6時5分。……あいつ遅くね?何かあったんじゃないかと心配になってスマホを出して電話をかけると、すぐに繋がった。


「あ、剣持? 今どこにいんの?」

『…………家』

「は? ……お前帰ったなら言えよ、待ってたのに」


 本日の俺の告白チャンスがなくなりました、流石俺の不幸(泣)


『……すまない。急用ができたから』

「そっか。でも今度からは連絡しろよな」

「……うん、気をつける……」


 まあ、急用なら仕方ねぇよなと思いながらも、電話越しの剣持の声に違和感を感じる。何だろう、いつもと違う気が…………。


「…………剣持、何かあった?」

『……っ! ……別に、何もない』


 そう言うけれど、何故か俺には沈んでいるような声色に聞こえてしまう。頼って欲しいのに、俺は剣持にとって友人、いや、守る側と守られる側のボディーガードの関係でしかないのだ。それが悔しくて、切なくて、胸が少し苦しくなる。


 俺のことをどう思ってるのか知りたい。

 剣持に好きな人がいると知っているから、それを今聞くことは怖くてできないけれど、俺の想いを少し伝えるくらいは許されるよな?


 これ以上剣持を問い詰めても答えは返ってこないことを察してそう思った俺は、彼女に話題を振る。


「そっか。ま、何もないならいいや。……剣持」

『……なんだ?』

「授業中指文字したの覚えてる?」

『……あ、ああ。あれか。あーいうのは本当に良くない。からかっ……』


 その時のことを思い出して少し動揺しているのか声に恥ずかしさが混じる剣持が言葉を遮って俺は真っ直ぐに電話越しで伝える。


「からかってねぇよ」

『…………え?』


 心臓がうるさいくらい鼓動を打ち、顔に熱が集中するのが分かる。


 少しくらい、意識してほしい。

 お前に好きな奴がいても、俺はお前に想いを伝えたい。


 お前に好きだって伝えたい。


 そう思ったら自然と言葉が口から紡がれていた。


「あれは、ちゃんと好きな奴に向けて書いたから、からかってねぇよ」

『…………………』

「…………………あー、明日、そのー、えっと、続き?話すから。だから、ちゃんと来いよ。じゃあな」


 沈黙が気まずくなった俺は、言葉がまとまらないまま彼女に伝えたかったことを言って電話を切り、その場でしゃがみ込んだ。

 顔が熱い。手が震える。電話越しでもこんなに緊張するものなのか。なんだか情けなくなってぼそりと呟く。


「…………かっこ悪ぃな、俺」


 あの沈黙の先にあったであろう答えを聞くのが怖い。けれど、それ以上に剣持のことをこんなにも好きで、俺の隣にずっといて欲しいと望んでいる自分がいる。だから、ぐだぐだ言ってられない。当たって砕けろ、俺!


「よし!!」


 勢いよく立ち上がり両頬を引っぱたいて、伝えきれなかった残りの想い全部を明日伝えると心に決めて家路に着いた。

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