両想い編
extra1.名前呼びの破壊力もすげぇって話
剣持と付き合ってから1ヶ月。いつもの学校の帰り道で俺は剣持に話題を振った。
「なぁ」
「ん?」
「いや、その……苗字呼びやめねぇ?」
俺が提案したことに対して、剣持は特に驚く様子もなく答えた。
「それはいいが……お前の下の名前、何だっけ? カナタ?」
「…………カナメですね」
彼女に名前を覚えられてなかったんですけど。超ショック。肩を落としていると、剣持が慌てた声をあげる。
「ごめん、不動院さんも高槻くんも『カナ』って呼んでるから」
まあ、不動院は俺のこと『カナ様』って呼ぶし、最近、楸も俺のこと『カナ』って呼ぶけども。
「だからって彼氏の名前忘れるとか酷くね?」
「何も言えない……が、お前こそ私の名前分かっているのか?」
剣持は自分が俺の名前を忘れてしまっていたことを悪いとは思いつつも、俺が彼女の名前を知っているかどうか疑わしい目を向けてきたので、俺は当然という顔で返す。
「凛、だろ?」
うおおおお! 待て、さらっと名前呼んじまったああああああああぁぁぁ!顔に熱が集中するのを感じていると、隣で少し頬を染めた剣持が少し怒った口調で言う。
「……おい、呼んでおいて照れるな、伝染る」
「う、うるせぇやい」
「はいはい。……あ、もう家の前か。送ってくれてありがとう」
「ん、じゃ、また連絡するな。じゃあな」
と背中を向けて黒澤に連絡しようとしたその時、手を掴まれて頬に柔らかい感触が押し当てられる。驚いて剣持の方を見ると、彼女がにこっと可愛らしく笑って一言告げる。
「また明日な、要」
言い終わってすぐ、彼女が入ってしまった家のドアを呆然と見つめながら俺の頭の中は、お花畑みたいにめでたくなっている。俺、無事帰れるのだろうか。
名前呼びの破壊力やべぇな。
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