16.誤解やら許嫁やらで白目ってます
「……はぁぁぁぁ………………」
風邪が完治した俺は長いため息をつきながら学校に行く準備を進めていた。
剣持に会いたくねぇ……。超気まずい……。
ため息をつきながら朝食の場につくと、両親がテンション高めで話しかけてくる。
「要、ため息なんてついて、恋でもしたか?」
「どうせこの前来てたっていう女の子でしょ、何で紹介しないのよ、付き合ってるの?」
「付き合ってねぇよ……俺の片想い」
「あら、じゃあ応援しなくちゃ」
「ああ、父さんも応援するぞ」
「いや、応援しなくていいっての……」
「照れちゃって……あ、そういえばあなた、あの件はどうしたの?」
「あー、それが……もう少し早く分かっていればよかったんだが、昨晩に伝えたが無理そうだ」
俺にはよく分からない話を始めたので、剣持に「風邪引いて手出しちまった事件」をどう説明するかを考えながら朝食をささっと完食し席を立った。すると、父さんに名前を呼ばれた。
「要」
「何?」
「お前に1つ言わねばならんことがある」
「え、何、怖ぇんだけど」
「…………すまん、父さんでも無理だった。後は頑張ってくれ」
てへぺろとしてくる父。可愛くねぇよ、出直してこい。それやっても需要あんの母さんだけだぞ。というか…………。
「いや、何が?」
「あ、父さんもう仕事に行かなきゃならんから、じゃ」
具体的なことを言ってけクソ親父ぃぃぃぃぃ!
母さんにも聞いたが、「お母さんも頑張れしか言えないわねー」と言われたので、訳が分からないと思いながらも俺は学校に向かった。
学校に着くといつも通り剣持はもう席についていた。おはようと挨拶を交わしてから俺は話を切り出した。
「剣持、あのさ……俺が風邪引いた時、家来てくれたんだろ? 授業のノートとプリント持ってきてくれてありがとな」
「気にするな。頼まれただけだ」
「それから、ごめん! 俺、変なことしたろ? そん時夢だと思ってて! ほんと悪かった!」
手を合わせて謝ると、少し呆れた声で返事が来る。
「本当だ。あーいうのは直接その好きな子にやらないとダメだろう。いや、付き合っていないのにそれはまずいか? ……とにかく、私だったからよかったものの、普通の女の子なら勘違いするぞ」
普通の女の子なら、ね……。改めて全く意識してもらっていないことを思い知る。それが悔しい。それに、俺の好きな子が剣持じゃなくて他の子だと思われてるし。
少しは俺のこと男として見ろよ。
俺は彼女の手を取って真面目な声で返す。
「勘違い、しろよ」
「…………え?」
「だって、俺の好きな子は…………」
キーンコーンカーンコーン
「あ、予鈴だな。で、西園寺、何だっけ?」
「…………………………帰りでいい」
「分かった」
予鈴てめぇ!!!!! タイミング考えろよ!! いやでも、よかった……のか? クラスメイトのほとんどがいる教室で告白せずに済んだんだもんな。結果オーライか。いやでも、あのタイミングはねぇだろ。まあ、帰りに話すって言ったし、意識してもらえて、誤解も解けて一石二鳥だ。……な、なんか緊張してきた……。
それからあっという間に時間は経ち、放課後になる。今日は剣道部が休みらしく、HRが終わってすぐに帰り支度をする。剣持と下駄箱の方に向かっていると、他の生徒たちが騒がしくしていた。
「校門の前にすごく可愛いお嬢様学校の制服着た子が立ってるって!」
「え、誰かの彼女とか? 見に行こうぜ!」
下駄箱で男子がテンション高めに叫んでいるのを横目に見ながら靴を履き替える。
すげぇ盛り上がってんなー。ま、興味ねぇけど。そんなことよりも帰り道に何としても誤解を解かないと、ただでさえ低い俺の片想いの可能性がゼロと化す。
そう決意を固めながら、剣持と横並びでいつものように校門をくぐったその時。
「……カナ様?」
真横から女の子の声がした。誰を呼んだんだと思って声の方を向くと、可愛い女の子が立っていた。お嬢様学校の制服着てるから、さっきの男子たちの騒ぎの元はこの子か。なんて思っていたら、その子が俺の顔を見て嬉しそうに笑った。
「やっぱり……やっとお会いすることができましたわ、愛しのカナ様」
「え………………………………?」
そう言って、俺のことを「カナ様」と呼んでくる女の子は俺に抱きついてきた。隣に剣持がいるのにこれ以上誤解されたくない。
「おい、ちょっと離れろって! てか、あんた誰だよ?」
「あら、お忘れになってしまったの? 昨日、おじ様……いえ、お義父様にお伝えしたのですが……」
「……………………はい? いや、聞いてないんですけど」
ていうか、さっさと離れてくれねぇかな、剣持も何がなんだか分からないって顔してるし。それに、お義父様って……父さんのことか?いや、おかしくねぇ?それは結婚した後の呼び方じゃ……。……いや待てよ。父さん、朝変なこと言ってたよな?
『……すまん、後は頑張ってくれ』
あの言葉の意味がこの女の子と関係しているのかもしれないと思っていると、女の子が俺から離れて「仕方ありませんわね、では……」と告げた後、スカートの端を持って礼をする。
「私、
拝啓、お父様、お母様。こういう大事なことはちゃんと言ってくれ、頼むから(白目)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます