15.風邪を引いてますご注意ください

 どうも、西園寺要です。ただいまの体温38.7℃。風邪を引きました。


 2日前くらいから喉に痛みがあったが、軽いものだしすぐに治るだろうとたかを括ったのが仇となった。くっそ、GW明けに風邪を引くなんてツイてない。

 ベッドでぐったりとしていると、部屋のドアをノックする音が聞こえ、それに返事をする。黒澤が入ってきて、俺の頭の下に氷枕を当てながら口を開いた。


「食欲はいかがですか?」

「腹減ってねぇ」

「かしこまりました。卵粥たまごがゆをお作りしておきますね。何かございましたらお申し付けください」

「んー」


 黒澤が部屋を出て行った後、俺は寝返りを打つ。


 今日、学校休んじまったけど、剣持どうしてっかな。俺が休んだって心配して…………ないな、「風邪を引くなんて馬鹿だな」って言われそうだ。ま、いつも通りくそ真面目に授業受けてるんだろうな。


 そんなことを考えながら俺は眠りに落ちた。


 それから何時間経ったのだろうか。ふと誰かに触れられたような感覚がして俺は目をゆっくりと開けた。


「……っ、悪い、起こしたか?」


 ぼーっとした視界に想い人が写る。何でいるんだ?と思いながら俺は彼女に返事する。


「だい、じょぶ……」

「そうか。……まだ寝ててもいいぞ?」


 そう言って剣持は優しい顔で俺の頭を撫でてくる。されたことがないことをされて俺は困惑しつつも、納得のいく答えが降ってくる。


 あー、これ夢か。


 剣持が何か俺に向けて話しているようだったが、俺はそれを遮るように彼女の腕を掴み、自分に引き寄せて抱き止める。すると、剣持が驚いた声をあげて困惑していた。


「……あ、あの……さ、西園寺……?」

「んー?」


 呼ばれて顔を上げると少し頬を染めた彼女の顔があった。これが夢だと思ったら更に欲が出た。剣持の頬に手を添えると、彼女はびくっと体をわずかに強ばらせ、目を逸らしながら困ったように言う。


「な、何してるんだ……?」

「……んー、可愛いなーって」

「……っ!? か……っ!?」


 ちょっと感覚はリアルっぽいけど、普段の剣持がこんなに照れるわけないし、やっぱこれは夢だ。こんな都合のいい夢なんだから、少しくらい自分の思うように行動しても許されるよな?


 そうして俺は頬に添えた手を1度離して、彼女の前髪に触れる。彼女のおでこを少し見えるようにして、唇をそっとそこに押し当ててから、彼女の顔を見て微笑んで伝える。


「……好き」

「……っ!?」


 あー、都合のいい夢の見すぎか? 急に瞼が重く……。まあいっか、夢で「好き」って言えたし。答え聞くのは怖いからこのままいい夢で終わったらいい。


 そう思いながら夢は終わりを告げ、俺は深い眠りに落ちた。


「……さま……ださい、要さま」


 俺を呼ぶ声が聞こえて目を覚ますと、黒澤がいた。


「おはようございます、よく眠れましたでしょうか?」

「んー……まだ体だるいし、熱あるけどな。でも、少し腹減った」

「かしこまりました、只今お持ちいたします」


 黒澤はそう言って部屋を出ようとドアノブに手をかけたその時、思い出したかのように声をあげた。


「そういえば、要さま」

「んー?」

「剣持様が顔を真っ赤にしてお帰りになられたのですが、何かあったのですか?」

「………………………………」

「要さま?」


 黒澤の言葉で、俺はあれが夢じゃなかったと気付かされて、恥ずかしさやら気まずさやらが混ざって、熱を持った身体の火照りが更に増したのを感じる。


 誰か夢だと言ってくれぇぇえええええ!!!!

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