【 出会い 】


 私の入院した病室は、四人部屋。

 窓際のベッドからも、綺麗な外の景色が見える。

 この当時、病室はどこも満床で、それぞれのベッドの間はカーテンで仕切られ、男女2組ずつに区切られた病室になっていた。


 先生と「ご飯が食べれないお話」をいつもしていたこともあり、同じ病室に入院していた人は、私が『』であると思っていたに違いない。


 そんなある日、斜め向かいに入院していた五十代の男性が、私のベッドのカーテン越しに、ノックをしてきた。


『コンコン』


「はい、どうぞ」


「あっ、向かいの佐藤だけど、飴玉いる?」


 その人の手には、色々な種類の飴玉が沢山ある。


「これよかったら、食べる? 飴玉はOKなんだよね」

「は、はい……」


「あっ、先生との会話聞いちゃってごめん。僕も絶食してたから、君の気持ちがよく分かってさ。売店にも行けないよね。これ、よかったら食べて」


 その男性は、私のベッドの上に、オレンジやピーチ、グレープにミルク、色々な味の飴玉を沢山、並べて置いてくれた。


 この人も、同じようにとてもお腹が空くという辛い思いをして、私のためにわざわざ自分の飴玉を持ってきてくれたんだ。


 その男性のやさしさに、思わず目頭が熱くなり、ベッドに散らばった飴玉が、その時、何重にも霞んで見えた……。



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