【 絶食 】


 私は絶食に入った。

 大好きな「食べること」ができなくなってしまった。


 嫌いな食べ物がないのが、私の唯一の自慢。

 でも、今はそれが絶たれている。


 5度目の入院だったので、慣れてはいた。

 しかし、やはり人間、点滴はしていても、お腹は普通に減る。

 

 先生との会話でも、自然にいつも食べ物の話題になった。


「先生、私、元気になったら、お寿司やうなぎが食べたい」


「元気になったら、食べられるよ。だから、早く治そうね」


 先生と私は、結構、長い付き合いになっている。


 だから、いつも病室には、笑顔があった。


 

『ぐぅ~……』


 それでも、先生が帰ると、お腹の虫が、そう鳴いてしまうんだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る