【 悲しみのガルル 】


 彼女の耳は横に伸び、鼻と口が前へと突き出し、体中から白い体毛が生え、お尻からはスルリと尻尾のようなものが伸びてきた。

 彼女の口からは八重歯が牙のようにニョキニョキと伸びて行くのが見える。


「ガ、ガルル、ど、どうして……」


 僕は驚き尻餅をつき、暗闇にうごめき変わってゆく彼女をただ見つめている。


「グルル……、グワァーーンッ!」


 ガルルは1つ大きな声で吠えると、体をブルブルを震わせて縁側の方へ四足歩行で走ってゆく。

 そして、月夜に照らされ始めた顔をこちらへ向けると、目から涙のようなものがキラリと光るのが見えた。


 もう一度、小さく吠えると縁側から外へと飛び出し、森の中へと消えて行った。


 ガルルは、人間ではなかったのか……?

 あのかわいらしい少女は、獣だったというのか……?



 ――しばらくすると、人の声が聞こえてきた。


「いたぞ! そっちに逃げた!」


「よしっ! 俺に任せとけ! 今度こそヤツを仕留めてやる!」


 嫌な予感がした。

 僕の足は自然と縁側を飛び出し、庭先の石の階段まで走る。


 すると、階段下には、町のハンターと姿を変えたガルルが見える。

 ハンターはガルルをなぜか撃とうとして、構えている。

 咄嗟に僕は叫んでいた。


「やめろーーっ! それは、ガルルだ! 人間だ! 撃つんじゃない!」


 でも、それは既に遅すぎた。



『ズドォーーン!!』



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