【 初恋 】


 結局、ガルルは夕方までテレビを見ていた。

 僕の腕をしっかりとつかんだまま……。


 そして、日が傾き、オレンジ色に縁側が染まると、また彼女はこう言った。


「タクボー、バイバイ」


 手を振ることをテレビで覚えたらしい。

 手を振って、また勢い良く縁側から外へ飛び出して行った。


「ちょ、ちょっと待って! ガルル……!」


 追いかけようとしたが、彼女の足はとても速い。

 僕が縁側から庭先を見た時には、もう既に彼女の姿はなかった……。


 彼女は一体どこへ帰ってしまったんだろう……。



 ――でも、次の日のお昼頃には、いつもガルルは僕の家に遊びに来る。

 いつものように温かいシャワーを浴びて、お昼ごはんを一緒に食べて、一緒にテレビを見る。

 最近は、仕事中は手を離してテレビを見てくれるようにはなった。


 彼女は最初は片言かたことの言葉しかしゃべらなかったが、いつの間にかテレビの影響で随分としゃべれるようになったようだ。


「タクボー?」

「んっ? 何? ガルル」


「私、タクボーのこと好きだよ」

「えっ!? そ、そうなんだ……。ぼ、僕もガルルのこと、好き……だよ……」


 恥ずかしそうに頭の後ろの方をきながらそう答える。


「私たち、恋人?」

「えっ!? あ~、いやまだかな……? 恋人は……」


「キスしてないから?」

「えっ!? そ、そうかもね……。あははは……」


 ガルルは、どんなテレビドラマを見たんだろう。

 昼ドラか……?



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