【 初めての顔 】


 翌日の朝、昨日の出来事が本当は夢だったんじゃないかと思い始めていた。

 縁側に出ると、庭の木々から枯れ葉が舞い降りて、まるで黄色と赤の絨毯じゅうたんのようになってきている。


 すると、庭の奥の石の階段から『カサカサ』という音が聞こえてきた。

 何かが階段を上って、こちらへ向かって来ているようだ。


 黒髪が一瞬覗く。


「ガ、ガルル……? そこにいるのは、ガルルだろ……?」


 僕は思わず縁側から裸足はだしで飛び出し、彼女のいる石の階段まで駆け出していた。

 近づいて行くと、彼女は少し怯えた表情を見せる。

 ガルルは、夢じゃなく本当にいたんだ。


「ガルル、昨日は探したよ。どこに行っちゃったんだい?」


「……」


 彼女の足元を見ると、靴を履いていない。


「足、汚れちゃってるね。また、シャワーでも浴びようか」


 そう言うと、彼女は僕の足元に目を落とした。


「あっ、ぼ、僕も裸足だったね。一緒に、足洗おうか……」


 すると、彼女は僕に初めてにっこりとやわらかい笑顔を見せてくれる。

 その時の彼女の笑顔がたまらなく、かわいらしく見えたんだ……。



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