【 夢 】


 すると、急に走り出し、玄関の方へ。


「あっ! ちょっと待って!」


 玄関先で、一瞬こちらを向くと、もう一度「バイ、バイ……」と言って外へと出て行ってしまった。


「あっ、ガルル! ちょっとどこへ行くんだい! 君の家は……!」


 急いで外へと出てみたが、彼女は姿は既にどこにもなかった。

 慌てた僕は思わず叫んだ。


「ガルルーーっ! どこにいるんだぁーーい!」


 僕は夕日が照らす、この広大な山の中を探した。

 やがて辺りも暗くなり、完全に彼女を見失っていた……。


「ガルルーーっ! ガルルーーっ!」


 虚しく山の中で響く声。

 僕は迷子の彼女を救えなかった……。


 家に戻ると、すぐにスマホで110番する。


「あ、あの、迷子になったと思われる女の子を山の中で見たのですが……」


 僕は警察へ今日あったことを説明した。

 やがて、近くの町の交番から警官が来て、事情を聞いて来るが、なかなか信じてくれない。

 どうやら、行方不明になった少女もこの近辺では一人もいないらしい。


「本当に女の子を見たんですか?」

「はい、確かに見ました」


「この辺りはあまり人が住んでいる家もないし、そんな14、5歳の女の子もしばらくこの村にはいないけどね」

「えっ? そうなんですか……?」


「はい、この村は若い人は皆、都会へ出てしまって、今じゃ子供たちはほとんどいません。お年寄りばかりの村ですよ」

「そ、そんなはずは……」


 その警官は、そう言ってバイクで帰って行った。


 僕は、夢を見ていたのだろうか……。



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