【 ガルル 】


「君の名前は何て言うの?」


 食べているスープの器からこちらを見て、「ガルル……」と彼女は言った。


「ガ、ガルル……? 君はガルルっていうの? 随分と変わった名前だね……」


 すると、またすぐに器へと顔を向け、四つん這いのままスープを勢い良く食べ始める。

 よほどお腹が空いていたんだろう。


「君はどこから来たの?」


「……」


 また、僕の方へ顔を向けて今度は黙っている。


「あっ、君は迷子になっちゃったんだよね? お父さんやお母さんに連絡しないとね……」


 彼女は、どこか首をかしげる仕草をしている。

 僕の言うことが聞こえなかったんだろうか……。


「君のお家の連絡先を教えてくれるかな? 僕がスマホで連絡してあげるよ」


「……」


 また彼女は首を傾げる。

 僕の言葉が分からないのだろうか?

 一瞬、彼女の名前と瞳の色を見て、ピンときた。


(あっ、彼女、ひょっとすると外国人かもしれないな)


 僕は咄嗟とっさに日本語以外で聞いてみる。


「Where are you from?」

「……」


「D'où venez-vous ?」

「……」


 やはり首を傾げる。

 彼女は、一体何人なんだ……。



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