【 第九話: 小鳥さんになったから 】


『ドーン!!』


 この高層マンションに何か爆発したような鈍い大きな音が響いた。


 このマンションの住人や、通りを歩いていた人たちが、その大きな音の方を見る。



「きゃあーーっ!!」


「お、おい、大丈夫か! ダ、ダメだ……! グチャグチャだ……」

「誰か飛び降り自殺したぞぉーっ!! 救急車、救急車を誰か呼んでくれーーっ!!」



 マンションの下では、人々が集まって、何やらスマートフォンでフラッシュを焚きながら、キラキラと美しい光を放っていた。


 遠くからは、救急車やパトカーのサイレンも聞こえてくる……。



 私は窓から、この綺麗な星空を眺めながら、大好きだった彼と、そして、お父さんにこう呟いた。



「私も、小鳥さんになるね……」



 私はベランダの手すりの上に立ち、両手を広げた。

 涙が夜風に飛ばされる。


 そして、このふたりの愛の巣から、夜空へと羽ばたいた……。





『ドーン……!!』



「お、おい! もう一人落ちてきたぞ!!」


「この女性も、ダメだ……」

「あっ! この女性は、確か……、最上階に住んでいる新婚さんの奥さんじゃないか……?」


「そ、そうだ……。名前は、確か……」



「『小鳥さんことりさん』だ……」



 私は、涙を流しながら、笑顔でお空に飛び立ったの……、


 『小鳥さん』として……、


 自由を求めて……。



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