Mermaid in empty blue

ロンリー・ブルー


「この辺りは暖かいと聞いていたのだけれど」


 私が虚水こくうに向けて言うと、唇の合間を縫ってこぽりこぽりと小さな泡が、大気なかまを求めて浮上していく。


 青い。


 空の様な希望に満ちた青ではなく、どこか重みと哀しみを含んだこの海の青。

 私はこの青に抱かれただ1人、遥か彼方の太陽が降り注ぐ世界を見上げている。


「やっぱり、少し寒いわ」


 その寒さの理由は、私自身よく判っている。

 ──‬寂しいから。


 1人は寂しい。1人は辛い。

 そう考えると、身体が凍えて仕方ない。

 青い寂寥に我慢の限界を感じた私は、知らぬうちに光へと手を伸ばしていた。


「トモダチ、見つけに行こうかな」


 地上に上がるのは怖い。

 けれど、この静かな海で1人凍え続けるのは嫌だ。


「うん。ここの人は、良い人かも知れないから」


 私は三日月の様に湾曲した尾ひれを振って、光へ手を伸ばした。

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