赤き森の葉に隠れた歴史
魔王はブーデン、ミザールや他の森魔族と共に焚き火を囲んで談笑していた。
「そうなのですか。森魔族には男性しかおらず、
「そうなんです。だから俺達は数年に1度、森魔族と森精族から1人選んで領域の外へ出して、子作りをするんだあ。俺とミザリーもお、そうして出逢ったんです」
「うふふ、普通は同棲なんてしないのだけれど。私達は互いに惹かれ合ったわ。それでこの風習に疑問を持っていらしたこちらの酋長を説得して、共に暮らす様になったの」
ミザールは、丸太を横倒しにしたベンチに座るブーデンの腕に抱きつきながら、得意げにその童顔を輝かせる。
森魔族は400年生きる森精族と比べれば、その半分程度の寿命しかない。森の霊気を受けたタフな種族ではあるのだが、その分消費が激しいのだろう。
それ故森魔族は世代交代が早く、新しい考えというのも根付き易い土壌にあるのだろう。
「えぇえぇ。ミザール様は我々も助けていただいていますから。彼女が来るまで、ここには家という概念すらなかったのですよ」
「ブーちゃんと暮らすためならお安い御用よ。それに森精族には木を一気に切り倒す技術なんてないのだから、お互いの長所で補い合うのは当たり前の事よ」
ミザールはここで森精族が培った技術を使い、森魔族達の生活水準を大幅に向上させたらしい。
「……なるほど。それであの森精族の少女が」
「そうだなあ……。ああいう森精族は偶にいるらしいんだあ。両親の事を覚えておきてえって子がなあ。気持ちは判るから辛えけどよお、決まりだからって無視してんだあ、俺は」
「そうだったのですか。でも、それはここの森魔族達も一緒ですね。きっと母親にいてほしくて仕方ないのです」
『マオウサマー』『オカ……マオウサマー』『ママー』『ママー!』
「集落にいる子供全員懐いてるじゃない……」
魔王は既に膝や腕に森魔族の子供を抱いており、その母性を遺憾なく発揮している。
「ふむ……私は今日の森精族こそが、キミ達の子供だと思っていた。その口振りだと違う様だな?」
「そうよ。私達の間にはまだ子供がいないの。ブーちゃんがその辺り頑なでね」
「だってよお……。こんな細い身体、抱いちまったらポッキリいってしまいそうでよお……ミザリーがいなくなっちまったら、俺どうすりゃ良いんだよお」
と、最早見慣れたイチャつき劇場を一堂が苦笑して眺めていると。
『……しもしーし。もしもーし。いるるん?』
「む……その声は痩せ渇き──『その渾名はもう良いし完っ全に間違って覚えてるし!! スピカよスピカ!』
「げいるーくん? スピカさんからの通信魔法ですか?」
「その様です。どうかしたか?」
「なーにぃ? スピカって従者クンの恋人? 奥さん?」「ミザリー。その辺にしておけよお」
ミザールがきゃあきゃあ言うので、ゲイルは一旦席を外して通信を再開する。
『何かヘンな事言ってる人いたけど、今大丈夫?』
「問題ない。リアラとは話したか?」
『うん。それで、もしかしたらそこの森精族は──』
『へぇ、森魔族も男しかいないんだ。ていうか異種族で子供ってできるのね』
「根本が光が闇かというだけで、森の霊気をその身に受けるという点では共通するからな。そのお陰だろうか」
互いに得た情報を擦り合わせ、そんな感想を言い合う2人。
「しかし、当面の問題はリアラだな。明日の寝床も不確かな以上、どうにか説得してこちらの領域に引き込めないか……森精族は木々の最中で暮らしているのだろう。寧ろ今日の寝床も良いものを用意してもらっているかどうか」
『ん? 明日はともかく今日は問題ないでしょ? 森精族も結構広いスペースに集落作ってたし』
「…………なんだと」
ゲイルは何気なく放った言葉から、思わぬ情報を得る。
『どうかしたの?』
「先程ミザールからは、森精族には木を根本から切り倒す力や技術がないと聞いた。だから森精族は狭い土地をどうにかやりくりしていると思ったのだが……」
『ん? 言われてみれば確かに。いや、まあ偶々広めに空いた土地があっただけって可能性もあるにはあるけど』
「とにかく、私は一旦王に報告を入れる。どんな形であれ、リアラとの合流は明日だ」
『そうね。魔王様の耳にも入れておいて。じゃあ明日また折りを見て連絡入れるわ。おやすみいるるん』
「ああ。おやすみ」
その会話を最後に通信魔法は途切れる。
ゲイルは火の周りに戻り、素早く王の元に跪いて己の考えを主人に伝える。
「王よ。1つ妙な仮説が浮かび上がりました」
「何でしょう?」
身体の周りで子供森魔族を寝かせる魔王が、甘酸っぱい果物を頬張りながら訊ねる。
「ブーデンとミザールの様な行動には、前例がある可能性が見えました。しかも、森精族側の領域に森魔族が住んでいたのかもしれません」
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