第23話 聖女様と風呂に入らないヤツ
「はい。今夜はうかんきつと麻雀コラボの時間です。では早速、カレンさんからご挨拶どうぞ」
バレンタインの二日後。
庵と明澄は二人のゲストを招いて、罰ゲーム有りの麻雀コラボを行っていた。
「こんばんわぁ! 貴方の
「麻雀一番弱いくせに何言ってんだ。今日はお前を風呂に入らせる配信だからな。あと、未成年に勧めるなよ! はい、次」
「おはやー。どうも九重零七でーす。今日は三人でカレンの家から配信してます。今夜は役満出しまーす」
明澄に促されると、今日のゲスト二人が挨拶をしていく。
カレン・アズライールと名乗るのは、黒いローブ姿に長い金髪の長身の美人で、大きな鎌を持っていた。
豊満なボディに挑発的な瞳、際どめの衣装、とエロティックなお姉さんのような雰囲気があるが、実はタバコ、酒、ギャンブルをするダメ人間として知られている。
そんなわけで、彼女はぷろぐれすに所属するライバーの仲間やリスナーからは、クズライールと呼ばれている始末。
そして風呂にもあまり入らないという本格的なダメ人間。
今日はそんな風呂に入りたがらない彼女を罰ゲームとして、風呂に入らせるための麻雀コラボとなっている。
またリスナーに手牌が分かるようにそれぞれ麻雀アプリを使い、庵以外の三人のそれぞれの視点で配信をしていた。
「そうだ。氷菓、そのバレンタインの衣装可愛いね」
「ありがとうございます。ママに最高の衣装を貰いましたので」
「あ、バレンタインと言えば誰かにチョコあげたの?」
「えっと……」
「気になるねー! お嬢ちゃん、誰にあげたのかおじさんに教えてみ?」
対局前に雑談をしていると、今日も使っている氷菓の新衣装とバレンタインの話題に移る。
またチョコの話になると彼女は少し詰まって、それを見逃さなかったカレンと零七が食いついてくる。
《え、うかまる、誰かにあげたん?》《気になるわ》《ママにだよね?》《うかまるもお年頃だもんな!》《いいなぁ、うかまるのチョコ》《気になる》《氷菓は俺たちにくれたもんね?》《青春だぁ》
するとリスナーらも続々と、悲喜こもごもに反応していた。
一方で明澄はどうしましょうか、とは口には出さないが、何となくそんな雰囲気が庵の方に伝わってきた。
「俺が貰ったな。事務所経由だけど」
「おお! やっぱりママにあげたんだ。てぇてぇなー」
「手作り?」
「いや、めっちゃ高級なメーカーのやつ。すんげぇ美味かった」
「いいなぁ。私も手作りじゃなくていいから欲しい」
「ワインのツマミにチョコって合うからね。アタシもちょーだい」
「あ、ははは……来年はお二人にもあげますから」
実際は、昨日明澄は庵に直接チョコを渡しているが、アイドル売りしていないとはいえガチ恋のファンには配慮した方がいい。
そんな答えづらい質問に庵が助け舟を出しつつ、「うかんきつてぇてぇ」という状況に持っていって上手く躱す。
義理、直接だったり手作りでは無いことを強調しておけば問題ないだろう。
そうすれば、明澄から『ありがとうございます』、と庵に対して内々にメッセージが来ていた。
「おーい、氷菓、零七。そいつの部屋の様子は?」
「クサイ。部屋の中が汚いもん。早く帰りたいんだけど」
「ダメです。これは酷いです」
「もう、ぷろぐれすのイメージ悪くなるから早く解雇した方が良くないか?」
「アタシは社長と仲良いもんねー。解雇されないよん。風呂もやだよ」
「もうクサライールに改名したらぁ?」
《クサライールw》《クサライールは草》《クサライールは臭》《うかまるがんばえ》《クサライールw》《二人が可哀想》《#カレン、風呂入れ》《のえーちゃん……》《クサライールw》
カレンやカレンの部屋の中を明澄と零七は嫌そうに実況するがカレンはどこ吹く風。
そんな可哀想な状況に置かれた二人をリスナー達は気遣ったり、カレンを揶揄する発言を楽しんでいたりと沸いていた。
「――――というわけで、最下位になったらトップからの罰ゲームを実行する、シンプルなルールです。それでは始めていきましょう」
雑談やおふざけを交える中、明澄がゲームルールを説明したりとすでにカオス。
そんなカオスな配信だが、明澄の方にはもう二万人が集まっていた。
「イェェエエ! 私の鎌が騒ぐぜ! カシュッ」
「カシュッ、じゃねぇ。未成年の前で酒飲むな。あと鎌は仕舞え」
「まぁ、
「汚い、クサイ、酒カス……もうやだぁ」
進行を明澄が、ツッコミを庵が担当し、零七が実況して、カレンが暴れる。
因みにだが、明澄が言うように酒を飲むカレンがいるので、監視役として夜々が裏に居たりする。
そうして、めちゃくちゃなコラボ配信に見えて、それぞれがバランスを取りつつ、放送が始まった。
「御無礼、ロン。タンヤオ、ドラドラ、赤。カレンさーんちょうだい」
「うがぁ」
「聞こえなかったか? カレン・クズライール。ロンだよぉ」
「ぐはぁ」
「リーチ、一発、チャンタ、裏ドラ3。親っパネ、インパチでよろしく」
対局が始まると、卓上を席巻したのは零七だった。
「えっぐ」
「零七は豪運ですからねー」
「ふええーん。もう点数ないのぉぉぉぁ」
《これはゼロさまの豪運》《ココ様の豪運きちゃー》《これは風呂直行》《息をするように点棒取るじゃん》《強すぎwww》《もう、はよ風呂入れ》《カレン・フロハイール決定》
悉く上がり続ける零七だが、彼女はガチャやゲームの対戦において、異常な豪運を発揮する。
ファンからは「ゼロさま」や「ココ様」と崇められていた。
またガチャに関しては「九重教」と言われるものまで存在するほど、奇跡を起こしてきたVとしても有名だ。
麻雀はそれほど強くないのにも関わらず、今日もその豪運を発揮して、カレンだけでなく庵たちからも点数を奪いまくっていた。
「ここから、ここから! 役満上がるんだぁぁ! カシュッ!」
「だから、飲むな! 零七そいつを早く風呂に連れて行け。もう勝てねぇだろ。その天使、もうリーチ出来ねぇし」
「はい、お風呂入ろうね」
「嫌だ! 役満出せば勝てるわ! 舐めるなよ、生娘共がっ! あ、童貞もいるのかなぁ?」
「発言には気をつけてくださいね? 大会とかから排除しますよ?」
「すみません」
リーチすら出来ないような点数になってもなお暴れ散らかすカレン。
庵と零七が手を焼くも、明澄だけは絶大なチャンネル登録者数と大会の運営を行う司会系のライバーだけあって、権力を上手く使いカレンを黙らせたりしていた。
「よし、イける! 槓!」
「その
「いやぁぁぁ」
結局、カレンは零七にいいようにやられ、罰として風呂に入る事が決定した。
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