第二話
攻略キャラクターの一人。国で一番の商人の息子である『シュレイン・フォーガス』は生粋のプレイボーイだった。
色気……とでもいえばいいのだろうか。とにかく女性の扱いが上手いのだ。
しかし、それは幼少の頃から何かと忙しい両親にかまってもらえなかった事が原因で、その孤独さから来る寂しさを埋めたいが為に彼はそれを埋める相手を求めた。
つまり、相手は誰でも良かったのだ。
そして、そんな彼にも婚約者がおり、一時は女遊びもしていなかったのだが、元々の……もはや『癖』とも言える女癖の悪さは簡単には直らず、魔法学校に入学して元に戻ってしまった。
ただ、それに拍車をかけてしまったのは彼の婚約を「仕方なく」受けた相手の態度のせいもあったのだろう。
だからこそ、戻ってしまったのだ。そして、そんな彼を叱ったのが主人公だった。
学校に入学以降、恋愛の噂に事をかかなかったシュレインの話は誰もが「またか」と放置していた中でこうした事が起きた。
そして、なかなか自分になびかない主人公の反応を見て彼は興味を持つ……という内容だったのだが、実は彼女が自分の家よりも前に王宮で商品を卸していた家の人間だと知り、途中から彼は主人公から距離を取る様になる。
でもそれは「自分の家が邪魔をした事によって彼女の家の仕事を奪った」と彼が勘違いしたためである。
本当は自分の死期を悟った主人公の父からの依頼を彼の父が請け負ったのだ。
ゲーム中の彼のストーリーはざっとこんな感じなのだが、実は同じ業種。つまり購買店員のクリスに対してはどことなく目の敵にしているところがあり、彼にいつも突っかかっていた様に思う。
ただ、当の本人はつかみどころのない性格だ。いつも暖簾に腕押し状態ではあったが……。
ちなみに、悪役令嬢のクローズが裏口のルートで手に入れた毒で主人公を殺そうとするエピソードがあるのだが、それをシュレインは阻止し、その出来事をきっかけにクローズは破滅へと導かれている。
しかし、実はコレはその裏口ルートの商人に対してクローズの顧客データを売っており、そして「彼女がコレを買いに来る時に知らせて欲しい」といった取引をしていた事が後に公式で明らかにされている。
だから、ファンからは一番嫌われている攻略キャラクターでもあった。
「……」
そして、実はこの『星空会』のイベントは「クリスのためのモノ」とされることが多いが、そもそもクリスは隠し攻略キャラクターだから、最初には攻略が出来ない。
そのため、本来は「シュレインのためのイベント」という位置づけだった。
ただ、あまりにもシュレインの人気がない上にクリスのイラストの出来が良すぎたが為に埋もれてしまった。
何かと不憫に見える彼だが……まぁ、人の情報を売ったのだから自業自得か。
でもまぁ、そんなキャラクターだ。そして、そんな彼が今主人公たちといないという事は……とアリアは思考を巡らせて辺りを見渡すと。
「!」
運動場から少し離れたところの誰もいない場所に怪しい人影が見えた。
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