第二十一章 『星空会』にて

第一話


 そうして迎えた『星空会』当日――。


「あっという間に当日だね」

「そう……ですね」


 生徒たちが集められた運動場には学年もクラスもバラバラ……ただ、仲の良い人たち何人かでグループが出来ているのがチラホラと見える。


「……」


 ただ、やはりどことなく緊張感が漂っている様に見えるのはやはり一年生だろう。でも、それはどうしても仕方のない話だ。


 アリアは「それよりも気になるのは……」と周りを見渡していると……。


「えぇ。そんな事ないですよ」


 甘ったるくて、語尾を少し伸ばした可愛らしい声が……アリアたちがいる場所の少し前から聞こえてきた。


 少し不安そうにしつつも笑う主人公の姿はさながらヒロイン……いや、本当にゲームの中ではヒロインなんだけども。


「いや、何が起こるか分からないからな」


 そして、そんな主人公。ソフィリアに優しく声をかけるのは……やはりリチャード王子だ。


「ああ。俺たちが守ってやる」

「君みたいな脳まで筋肉の様な人間では課題を解くのに時間がかかり過ぎてしまいます。彼女の事は私と殿下にお任せしてあなたは自分の事に集中して下さい」


 かっこよく「守ってやる」と言っているところから即座に相手を落とすような言い方……さすがである。更に殿下だけでなく、サラリと自分も入れている相当な策士だ。


 そんな、彼らの様子を見ていると……。


「リチャード様たちはどうやらずっと彼女といるつもりの様ですわね」

「!」


 アリアたちの後ろからクローズが現れた。


「クッ、クローズ様。お、おはようございます」


 突然現れた彼女に驚いて振り向くと、クローズはキュリオス王子とアリアに「ごきげんよう」と笑顔で挨拶をする。


「……いいのかい? このままで」


 王子がそう尋ねると、クローズはケロリとした様子で「ええ」と笑う。


「今更何を言っても無駄ですもの。むしろ、私が彼女や彼らに苦言を呈したところで逆に挙げ足を取られるのがオチ。下手をすればそれを口実にされかねない。そんな無駄な事になんの意味があるのでしょう」


 そう言い切るクローズに、アリアはもはや「カッコいい」とすら思った。今の彼女には恋愛にすがっている悪役令嬢の影はない。


「他の方たちも皆さん同意見の様ですし、コレが終わったら正式に申し入れを致します。あれでは改善の余地もないでしょう」


 クローズはそう言いながら「あれ」と言った主人公のたちの様子をチラッと見る。


「……」


 彼女たちに周囲の目はどう映っているのだろうか。いや、きっと何も見えてはいないのだろう。


「?」

「どうかしたのかい?」


 そんな時、主人公たちを見ていてふと攻略キャラクターの一人。商人の息子がいないという事にアリアは気が付いた。

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