第四話


「はぁ」


 前世に限らず、この世界に転生してからもなんだかんだ「自分自身の恋愛」には目を向けていなかった。


 いや、向けようとすらしていなかったかも知れない。


 言い訳になってしまうかも知れないが、アリアからしてみると、正直「それどころではなかった」という気持ちがある。


 王宮に行ってその姿を時に「ああ、やっぱりこの世界は本物なんだ」と思ったし、それと同時に「自分はこの世界でモブなんだ……」という気持ちになったのも事実だ。


「……お嬢様」

「ん?」

「私はお嬢様がキュリオス殿下と……今も仲良くされている事がとても嬉しいです」

「な、何? 突然」


 リアに突然そう言われ、アリアは思わず尋ねる。


「いえ、お嬢様がキュリオス殿下の事で悩まれている様に見えたので。ただ、私では……そのお嬢様お悩みや苦しみは分かりません。魔法が使えるというワケでも、学があるワケでもありません」

「……」

「そんな中で、お嬢様と対等……いえ、それ以上に実力も権力も持った方とこうして良い関係でいられる事はとても喜ばしい事だと……私はそう思っていると伝えたかったのです」

「……そう」


 確かに、リアの言う通りかも知れない。


 今、こうして何気なく一人ぼっちにならず、周囲からは……陰で色々と言われながらも学校生活を送れているのは「キュリオス王子のおかげ」と言っても過言ではないだろう。


 それに、主人公の動向やリチャード王子の話。そして、攻略キャラクターたちの事に関してもキュリオス王子からの情報によって分かっている事は多い。


 そして何より……学校の中でも話しかけてくれる存在がいるという事が何よりもありがたかった。


「……もちろん。キュリオス殿下もお嬢様と知り合った事で得られた事は多かったとと思います。ですが、お嬢様も得られたモノは多かったのではないでしょうか」

「……そうね」


 それはもうたくさん――。


 最初でこそ距離を置こうとしていたのが嘘のだったかの様に今では……離れてしまうのが考えられないくらいだ。


「私はお嬢様が幸せであればそれで良いのです。お嬢様の幸せが私の幸せで一番大事な事ですので」


 リアはそこで言葉を区切ると……。


「もし、お嬢様を悲しませる様な事があれば……たとえ王族だとしても容赦は致しません」

「ちょ! それは止めて! 私にとってリアは家族同然なんだから! 私のせいでそんな事しなくていいわよ」


 アリアが必死にそう言うと、リアは「冗談です」と言ってスッといつもの様子に戻った。


「……あなた、随分と変わったわね」


 そう言うと……。


「おかげさまで」


 リアは無表情でそう言って、その後すぐにお互いどちらからともなく笑ってそのまま笑い合ったのだった――。

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