第三話


「はぁ……」


 ――どうして……あんな事を言ってしまったのだろうか。


 アリアは「今までの自分だったら……」と考えたところで、ふと「いや、なんだかんだ今までも流されていたかも知れない」と思った。


 それも小さい頃に手を繋いだ時から……。


 でも、それはいつもキュリオス王子が何かしら行動をしたからであって自分から「こうして欲しい」と言った事は……。


「――」


 正直、今でも思い出すだけで顔が赤くなってしまう。


「うぅ」

「悩み事ですか」

「うわっ! びっくりした」


 突然現れたリアに、アリアは思わず体をビクッとさせて驚いた。


「え、何?」

「いえ、帰られてからずっと百面相をされていらっしゃったので、どうされたのかと」


 どうやら心配してくれていたらしい。


「ここ最近。何やらずっと考え事をされている事が多く、夜更かしをされている事も多かったので」

「それは……ごめん」


 素直にそう言うと、リアはすぐに「ですが」と言葉を続ける。


「王宮に行かれて帰って来られた際は比較的穏やかに過ごされているという印象でしたので……」


 ――ん?


 リアの言葉にアリアは疑問を抱き、思わず「え?」と尋ねる。


「そんなに……違った?」


 そう尋ねると、リアは「はい」と感情も出さずに機械的に答える。


「ケビン様にお会いして以降。ずっと重い雰囲気でいらっしゃる事が多かったのですが、キュリオス殿下にお会いした日はどこか嬉しそうな……いえ、楽しい? そんな雰囲気を感じられたのですが」


 リアは「まさか、気が付いていなかったのですか?」と言いたそうなニュアンスでアリアを見る。


「……」


 確かに、王宮に行くときは大抵が「現状の報告」つまり「主人公の動向や次期生徒会のメンバー。つまり攻略キャラクターたちの現状について」の話がほとんどだ。


 しかし、実際はそれだけではなく「ちょっとした出来事の話」や「課題」も一緒にする事が多いため、正直。場所は全然違うが、学校に行っている時とあまり変わらない印象ではあった。


 でも、アリアは全然そんなつもりはなかったが、リアからはそう見えていたらしい。


「ですが、今日はいつも以上に重い空気を感じましたので……どうされたのかと」

「そう。でも、何でもないわ。ただ、ちょっと考え事を……ね」


 さすがにリア相手でも「どうしてそうなっているのか」という原因までは言えない……というより、言いにくい。


「……」


 アリアは前世では「リアルな恋愛」を今まで一度も経験がなく、またそのせいでこういった時どうすればいいのかすら分からなかった。


 ――悲しい事に。

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