第四話


 手紙を受け取った翌日。アリアはすぐに返事を出し、日時などを決め、あっという間にその当日を迎えた。


「……」


 そうして久しぶりに見上げた王宮は……魔法学校の大きさを知ると、それよりも更に大きいと言う事を思い知らされる。


「――お待ちしておりました。ウォーレン様」


 出迎えてくれたのはキュリオス王子やリチャード王子を小さい頃から知る執事長とメイド長だった。


「お久しぶりです。その……珍しいですね。お二人が出迎えてくれるなんて」


 そう、いつもであればキュリオス王子の側仕えの使用人が出迎えをしてくれるはずだ。


「お気になさらないでください。私たちが久しぶりにあなた様にお会いしたかっただけの話」

「ええ。本当に……お久しぶりです」


 そうメイド長と執事長は言ってくれて嬉しいのだが、実際のところは魔法学校に入学して一年も経っていない。


 確かに、執事長とメイド長はアリアがこの王宮に来る様になってから、娘の様にかわいがってくれた。両親からまともな愛情を受けてこなかったアリアにとってはそれがとても嬉しくて……だから、二人の言っている事は分からなくもなかった。


 でも、まさか二人も同じように思ってくれていたとは……。


「あ、ありがとうございます。そこまで言ってもらえるなんて」


 照れくさそうに言うアリアに対し、二人は穏やかな笑みを浮かべる。


「いえ。私たちの方こそ。キュリオス様とも仲良くしてくださってありあがとうございます。本当に……あなたの様な方と出会えた事が私たちにとってもとても喜ばしいことで……」

「そ、そんな……私は」


 ここまで言われてしまうとかえって申し訳ない気持ちになる。


 何せ当初は「いかに王子と関わらない様にするか」を課題に挙げていたくらいだ。しかし、王子がそんなアリアの予想に反した行動をしてくれた結果。こうなっているだけの話であって……。


「気にしないでください。この人はいつもこうだから」


 そうメイド長がコソッとアリアに言う。


「あ、そうなのですか?」

「ええ。リチャード様が学校に行ってしばらく経ってからは特に感激しやすくなってしまって……随分と変わられてしまったから」


 メイド長は少し寂しそうな表情を見せる。


「……」


 二人のそんな表情を見つつ、アリアは「その理由は……言うまでもないだろう」と思った。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


「――こちらでお待ちください」

「は、はい」


 そうしてあんなにされた部屋は……これまた懐かしいキュリオス王子から個別で最初に招かれた時に案内された部屋だった。

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