第二話


 その可能性は非常に高い。何せたった一年で同級生の攻略キャラクターを陥落させた彼女だ。


 多分『チョコレートクッキー』だけでなく、こうしたイベントも友好的に活用しているに違いない。


 しかも、彼女は「キュリオス王子にアプローチをしようとした」という様な事もほのめかしている。


 ただ、どうにも上手くはいっていない様子だったが……。


「……」


 この『星空会』というイベントは前世でアリアは簡単なミニゲームとそれをクリア。もしくは失敗のどちらかの後のストーリー展開を読むというごく普通の「ゲーム」という形で経験はしているが、コレが「現実」として考えると……なかなかにハードな行事だ。


「しかも……」


 案内状を隅々まで読んで知ったのだが、そこには「飛行魔法の使用は禁止とする」と書かれており、それは即ち移動手段も限られてくるというワケで……。


「なるほどね」


 そして、この禁止事項を読んでアリアはピンと来た。


「それでクリスってワケね」


 実は「なんでこの『星空会』でクリスがいるのだろう?」とアリアはゲームをプレイしている時にでちょっとした疑問を抱いていた。


 一応「この行事では飛行魔法は使えなくなります」といった説明はされていたのだが、いまひとつピンときていなかったのだが、この世界で実際に魔法を学んでいる事によって、ようやくその理由が分かった。


 なぜなら、こうした禁止事項……しかも『魔法』の使用を禁止とする場合。それを実現させる方法は二つしかないからだ。


 その内の一つは「結界を張る」というモノなのだが、この案内状をパッと見た限り『星空会』で行動出来る範囲のボーダーラインに既に結界を張る様になっているらしい。


 これでは二重に結界を張る事になってしまうため、どちらかの結界の効果が落ちてしまい、本末転倒になってしまう。


 そうなるともう一つの方法しかないのだが、その二つの目の方法こそが「魔法道具を使う」というモノである。


 コレであればコストはかかるものの、生徒一人一人に魔法道具を渡せば良いだけなので催す側の先生たちの負担も少ない。


 そして「魔法道具」という話になれば、その道具の説明なども含めて必然的に購買で魔法道具を販売しているクリスの出番という事になるワケで……。


「そういえば……」


 そもそも、クリスは学校長から言われて購買で働いているいわゆる『雇われ店員』という設定がされているのは資料集で書かれていた。


 しかし、元の職業などの詳しい話は設定資料集にすらなかったが、なぜか学校長とはそれなりに……いや、かなり仲が良いという事は作中でも描かれていた。


 ただ、それを見た限りどちらかというと……学校長の方が戦々恐々としていた様にアリアの目には見えた。


 見た目こそクリスの方が幼く見え、それこそ「大人と子供」にも見えなくない程の差を感じた。しかし、二人で話している時の関係性は……言うなれば「先輩と後輩」という感じにも見えたのだが……あれは気のせいだったのだろうか。

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