第十九章 ジンクスにて
第一話
「……」
ケビンお兄様と別れ、実家に戻っていないアリアは寮へと戻り、一人で悶々と物思いに更けていた。
本当であれば、もっと色々と……お兄様の仕事の話とかしたはずなのに、アリアの頭の中では『ジンクス』の話を聞いてからはそれしか頭に残っていなかった。
「はぁ、それにしたって……どうして」
ケビンお兄様から『ジンクス』の話を聞いて、アリアの頭に真っ先に浮かんだのは……キュリオス王子だった。
「いえ、それはきっと……」
でも、それは決して
ただ、今までの学校生活ではアリアとキュリオス王子はほとんど一緒に行動をしている。だからこそ、最初に頭を過ったのだろう。
そう思う事にした。
そもそも、上位と下位のクラス別で多少の授業レベルの差はあれど、クラス内で前世の授業ではよくあった班を作る……など分かれる事がほとんどないのだから仕方がない。
どうやらこの魔法学校の授業では基本的に「個人」でやる事を尊重している……というのも関係している様だ。
それに、お兄様から聞いた『ジンクス』では「手を繋いでいる事」が必要で、多分そうなる事は……ないだろう。
ただ、一緒にゴールをする可能性は否定出来ないが。
それよりも、アリアが懸念しているのは「主人公の行動」である。
今回。アリアはゲームの主人公であるソフィリアの忠告……の様なモノを結果的に無視をしてクローズに手を貸した。
試験結果が発表された時、クローズはアリアやキュリオス王子と一緒にいたからなのか、ソフィリアが直接絡んでくる様な事はなかった。
しかし、正直アリアとしてはこの長期休暇に入る前に何か行動を起こすのではないか……と考えていたのだが……。
「……」
そんなアリアの予想に反してソフィリアはアリアやクローズに直接的な接触もなく、そのまま休暇に入って今に至っている――。
この「何もなかった」が実はアリアとしては逆に怖いところだ。
なぜなら、ソフィリアは「ゲームのシナリオ通りに役割をしていない」と言ってアリアに接触をしてきた様な人物だからだ。
今回、そんな彼女に対してアリアは一種の挑発的な行動を取ったとも言えるにも関わらず、ソフィリアは何もしてきていない。
「嵐の前の静けさ……という事なのかしら」
どちらにしても警戒はするべきだろう。
そもそもソフィリアの目的は『ハーレムエンド』の様だという事は彼女から接触してきてくれたおかげで何となく分かっている。
しかし、この『ハーレムエンド』はゲームではその仕様故に存在していない。
だが、彼女はそれを達成しようとしており、その準備は着々と進んでいる様だ。その『ハーレムエンド』の後の自分の人生を考えずに――。
「ん? 待って」
そこでアリアは「ハッ」とした。
それは「ソフィリアがケビンお兄様の言っていた『ジンクス』を利用して、まだ攻略出来ていないと思われるキュリオス王子……もしくはクリスを今回落とそうとしているのではないか……」という事にこの時になって気が付いた。
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