第九章 寮にて

第一話


「……」


 基本的にアリアは授業が終わったらすぐに寮に帰る。


 テストがある場合は放課後図書館に行く事もあるが、大体は寮の自室に引きこもる。


 学校の授業は前世で言うところの週五日あり、休みは二日といったところで、いつも午前に一コマ午後に二コマという具合に分かれているのだが、その大体が魔法実技が午後に来る。


 まぁ休日もアリアは自室で過ごす事が多いのだが、ごくたまに王子からお誘いを受ける事もある。


 おかげ様で朝の様に一部の貴族から小言を言われる事はあっても、王子自身が「彼女は僕が認めた友人で国王陛下も認知している」と筋を通してくれたおかげで分かりやすい嫌がらせなどなく毎日を過ごせていた。


「でも……」


 きっとリチャード王子の場合は違うのだろう。


 何せ相手は『庶民』だ。


 アリアも「貴族の中で位が低い」とは言っても、一応貴族なので、まだ目に見えて……という事はなく、どうにかはなっている。


「後、もう一つ気がかりなのは……」


 やはり『悪役令嬢』の事だろう。


 ただでさえイレギュラー続きの中での婚約者であるキュリオス王子の話。


 今までなかなか会えない中でも時間を作ってでも会ってくれていた相手が突然自分に会わなくなったら「何かあった」と思うのが当然の流れだろう。


 そしてその中で『自分以外の女性と親密になっている』という事を知ったら……。


 もしかしたら、ゲームの様にイジメや嫌がらせに走ってしまうかも知れない。


 いや、ひょっとしたら彼女の周りの令嬢が「クローズ様のため」とか都合の良い事を言って主人公に何かをしでかす可能性もある。


「!」


 むしろ今回はそうなる可能性がものすごく高い。


 たとえ本人がそれを望んでいなかったとしても……。


「……」


 ただ、アリアと彼女ではそもそもクラスが違う。


 アリアのクラスはいわば入学試験の上位の成績を収めたクラスで、クローズ令嬢は下位のクラスだ。


 実はこのクラス分けはゲームの中でも変わらない。


 しかし、公爵家の力を持ってすれば上位のクラスに入ることも出来たはずだ。だが、彼女はそれを「ここでは結果が全てですから」と意外にもすんなり受け入れている。


「ん?」


 そこでアリアはふと疑問に思った。


 ゲームの時は「そこらへんは真面目なんだ」くらいにしか思っていなかったが、よく考えるとおかしい。


 なぜなら、普通はこうした『悪役令嬢』と呼ばれる人は基本的に自分勝手で「自分がルール。私が良いと言ったら良い」といった様子で自分の権力をフルに活用してそういった学校の慣習やルールすら変えてしまう事が多いからだ。


「なんだろう」


 この違和感……。


 アリアは突然わいた疑問に首を傾げ、一人小さい頃から書いていた「対策ノート」を広げた。

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