第五話
思えば「キュリオス王子ってこんなに笑うキャラクターだったっけ?」と感じる事があう。
いや、ゲーム内では比較的笑顔の多いからキャラクターだったとは思う。しかし、ここまで……言い方は悪いが純粋な笑顔だったかと聞かれると……多分、違うと思う。
何がきっかけで彼をここまで変えたのか……いや、ひょっとしたらこれも『リメイク版』だからこその変化なのかも知れない。
いずれにしても、笑顔が増えるのはいいことだ。
「ああ。そうだ」
「?」
すると、キュリオス王子は何かを思い出した様にアリアに外に出る様促した――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「どうかされたのですか?」
そうして連れ出されたのは人気の少ない廊下。
「うん。実は……ここ最近。兄上と婚約者の仲があまり良くないらしくてね」
「!」
アリアは内心驚きはしたものの、それを顔には出さなかった。
「リチャード王子に婚約者と言いますと、クローズ様でしょうか」
「うん。そう『イリーナ・クローズ』公爵令嬢」
王子はサラリとその名前を答える。
「殿下がそう言われるという事は……かなり表面的に出ているという事でしょうか」
こういった話は基本的には表に出さない様に細心の注意を払うはずだ。ましてや弟になんて……絶対にバレたくないと思うはずなのだが。
「――正直。分かりやすすぎるし、何より兆候は既にあったからね」
「……」
珍しく口ごもる王子をからかう様な真似はしない。それは王子の態度を見れば明らかだ。
「知っての通り。僕たちの学年にクローズ令嬢がいて、兄上は一学年上。一つ年が違うというだけでその意味はかなり大きい」
「一年の間はなかなか会えませんからね」
アリアがそう言うと、王子は「うん」と頷く。
「でも、それでも兄上は何とか時間を作って令嬢と会っていた。最初の内は……」
「……」
「ある日を境に兄上は令嬢と会わなくなり、次第に家にも寄り付かなくなった。あまりにも突然の変化にさすがにお父様も不審に思ってね。そこでお父様は『影』を放って調べさせた」
ここで言う『影』とは、文字通り王家を影で支える隠密機関の事である。
「その結果……」
「――ある庶民の方と親密にされている事が分かったと」
これにはさすがの王子も驚いた様だ。しかしすぐに「ある事」に気が付いた様だ。
「ああ、そっか」
「はい。私には兄がいますから」
「でも、それってつまり、周囲の生徒たちにもバレているって事だよね」
「そう……なりますね」
淡々と答えると、王子はこれまた珍しく「はぁ」とため息を漏らす。
「じゃあ、アリアは知っているかい? その名前を」
「……いえ。名前までは」
「そっか……。じゃあ、なんでそんなに親密なのか分かる?」
「……」
――分かる。
そう答えられたらどれだけ良いだろうか。しかし、これをここでは言ってはいけない。
「……いえ」
でも前世でゲームをプレイしているアリアであれば分かる。
なぜなら――。
「はぁ。その子、兄上が昔一目ぼれした女の子だったんだよ」
そしてその子がゲームの主人公『ソフィリア・クロイチェフ』その人である。
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