第四話


 この国では「学校」と言えば、『魔法学校』を指すことが多い。


 それは他にこの国で「学校」と呼べる施設がないからである。


 そもそも、貴族と庶民が同じ場所にいるという事自体本来珍しい事で、また寮生活もしている。


 しかし、いくら一言で「寮生活」と言っても何も一つ屋根の下で貴族も庶民も関係なく数人が同じ部屋で……というワケではない。


 一人一部屋が与えられ、それは貴族も庶民も関係なく入学当初からそう決められている。


 他にも使用人をつける場合は一人まで……などなど持ち物の規定など色々あったが、アリアとしては「使用人って一人で十分。何人もいらないでしょ」とか色々と疑問符が付く様なモノばかりだった。


 それに、そもそもここは学校なのだ。


 勉強をしにきているというのに何をそこまで着飾る必要があるというのだろうか。この学校にはとても可愛らしい「制服」もあるというのに。


 一応寮にも門限はあり、学校の授業が終わってからその時間までは何もしても自由で、それこそ勉強をしても良いのだが、言ってしまえば外出をしても良いという事にもなる。


 その時は普段は制服に対して文句を言っている貴族たちも喜んでそれを着る。


 なぜならその制服は「魔法学校の生徒です」という一種の証の様なモノだからだ。


 この国の人々にとってそれだけ「魔法学校に通う」という事は憧れの一つでもあったらしい。


 今となっては母親もきっと幼い頃、憧れを持った子供の一人だったのかも知れないと思ったが、それ以上の感情はなかった。


◆   ◆   ◆   ◆   ◆


 ――ちなみに、魔力のない子供たちはというと……庶民の子供たちは基本的に教会で粉われる「勉強会」に参加する事が多いらしい。


 こちらの「勉強会」は国がお金を出して無償で行っているモノで、読み・書き・簡単な計算などを教えているらしい。


 そうする事で将来の働き口の選択肢を広げようという狙いがある様だ。


 そして、貴族の場合はその家個別に家庭教師をつける事が多いらしい。


 しかし、貴族の中には家庭教師を雇えないほどの場合は位の高い貴族の従者になることもある様だ。


 そうすることで将来に役立てるという狙いがあるらしい。


「……!」

「またフリーズしていたよ」

「す、すみません」

「いいよ。アリアの考え癖なんて今に始まった事じゃないし」


 そういえば、いつの間にか「君」から「アリア」と呼ばれる様になっていた。


 でも、それに気が付いた時には周囲の人に認知されていて……アリアも「正さなくちゃ」と思いつつ、結局言えずにここまで来てしまった。


「はぁ、直さないと」


 そう小さく呟くと、王子は「別に直さなくていいよ」とまた穏やかに笑うのだった。

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