第三話


 基本的に魔法学校で学ぶ項目は「歴史」や「実技」が主である。


 そしてこの魔法学校は三学年制で、主人公はアリアと同じ学年……のはずで、既に顔を合わせていてもおかしくないはずなのだけれど……。


「……」


 今のところ一度もその姿を見た事がない。


 キュリオス王子や新たな設定として考えられる可能性としては『リメイク版』があげられるし、年齢を重ねる毎にその可能性が高くなっている様に感じる。


 そう思うのはなぜか……。


 一つに「キュリオス王子以外の攻略対象のキャラクターたちが一学年上にいる」という事だ。


 キュリオス王子は、一つ学年が上のリチャード王子の弟という事もあり、今の学年で落ち着いたのだろう。


 ただ、一つ不思議な点を上げるとすれば『悪役令嬢』であるクローズ様の学年がアリアと同じという事だ。


 嫌がらせやイジメをするにしても、同じ学年と一つ違う学年とでは全然話が違う。


 そもそも学年が違っては行動パターンが違い過ぎるのにどうやって嫌がらせやイジメをするというのだろうか。


 こうした部分は『同じ』というところがミソではないだろうか。


 それこそ「同じクラス」で「同じ学年」というのが大事だからこそ、嫌がらせやイジメという事がしやすいのではないだろうか。


 今はちょうど春の試験が終わったタイミングで、何か行動を始めるとすればそろそろ……。


「アリア」

「! 殿下……あの、授業は」

「終わったよ」

「――そうですか」


 どうやら色々と考えている内に終わってしまったらしい。


「――随分と考え込んでいたみたいだね」

「……そうですね」

「勉強の事?」

「……」


 キュリオス王子は笑顔で尋ねてきているけれど……どうにもその目の奥が笑っていない様に見える。


 いっその事話してしまおうか……なんて思う事もあるが、信じてもらえるかどうかも分からない。


 それに、主人公が何かしら行動を起こせば嫌でも耳に入ってくるはずだ。


 この学校では「貴族や庶民の身分関係なく……」という表向きにはなっている。ほとんどの人はそれに順応しているのだが、中にはずっと小さい頃からそれを基準に生きてきていきなり変えられないという頭の固い人たちもいる。


 庶民出身の主人公が何かしら行動を起こす。つまり、攻略に乗り出したらそんな貴族たちは面白くないと思うのは当然だ。


「……」


 そこまで考えてアリアはニッコリと笑顔を作り……。


「はい、次の授業について考えていました」


 そう王子に答えると、王子も「そっか」と笑顔で答えたのだが……この状況はまさに「狐の化かし合い」だった。

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