第五話
正直、この時のアリアの心情としては生きた心地がしていなかった。
なぜなら、今まで「出来る限り攻略キャラクターには関わらない様にしよう」という事はもちろん考えていたけれど、正直心のどこかでは「そもそも自分はモブだから基本的に関わる事すらない」と思っていたからだ。
それがどうだろう。アリアの目の前でいつの間にか「将来的には王子の結婚相手」という事で話が進んでしまっている。
しかし、残念ながらそもそも『先祖返り』という存在すら知らなかったアリアからすれば今の状況はどうしようもない。
いや、それ以上に前世でゲームをプレイしていたはずなのにどうして『先祖返り』という設定すら出てこなかったのだろうか。
「……」
考えられるのは『リメイク版』という事だ。
アリアがこのゲームをプレイしたのは初版。つまり初期のモノで、もしかしたらアリアが前世で死んだ後にこのゲームが新しい設定やスチルなどが追加された形で発売されたのかも知れない。
もしそうであれば、この『先祖返り』という新しい設定も、それをアリアが知らないという事も理解出来る。
ただ、そうなると考えられる懸念が一つ……それは主人公もアリアと同じ『先祖返り』の可能性が浮上してくるという事だ。
しかし、こればかりは主人公を実際に見ない限り分からない。
「――と言う事でよろしいかな?」
「え、あ」
ちょっと考え事をしている内にある程話がまとまったらしく、陛下と王妃様がこちらを向いている
「え……と」
ここで「すみません、聞いていませんでした」と言えるほどアリアに度胸はない。しかし「理解していないのに頷くのも後々困りそうだ」と悩んでいると……。
「お父様、どうやらアリアはずっと緊張していて疲れた様です」
「――その様だな」
「無理もないわね。突然私たちと一緒にお茶会だなんて疲れるのも無理ないわ」
王妃様はそう言って優しくアリアに微笑みかける。
「いえ、そんな」
「何、気にする事ではない。ひとまずお主にはキュリオスの『友人』となってもらうつもりだ」
「はい」
「ちなみに『婚約者』等の件はひとまず保留だな。もちろん『友人』としてキュリオスと同じ魔法の授業を受けてもらってもよい」
「え、いっ。いいんですか?」
アリアが思わずそう聞くと、陛下はどこか嬉しそうに「良い」と答えてくれた。
「もちろん、王宮内にある本を読んでもらっても良いです」
「あっ、ありがとうございます!」
王妃様の言葉にアリアが今日一番の笑顔で嬉しそうに答えると、お二人は嬉しそうに笑い合い、王子はなぜか「ふふ」と笑いを堪えていた。
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