第8話
「で?どうすんのお前」
テーブルに頬杖をつきなんとも言えない表情でそう聞いてくる友人に僕はどう返答するか悩んだ。
「どうするって言ってもなぁ…」
僕はいつの日かと同じように上を見上げて現実逃避する。友人、健と久しぶりに会って、積もる話をした。積もる話、というのも主なのは彼女のことなのだけど。
「とりあえずプリンでも頼もうかな」
そう言って僕はメニューを見て注文番号を確認する。こういった方式で頼むようになったのを初めて知ったときは大きな改革にも思えたが、今となってはそう変わらないようにもまた思える。
「はぁ…お前が久しぶりに会いたいって言うからわざわざ来たのに、いきなり弥生ちゃんのヤバい話聞かされた俺をほおっておいてお前はプリン食べるってか…」
「健も頼む?プリン」
続けてやいのやいのと言ってた彼は僕の言葉を聞いてまた先程と同じようななんとも言えない表情になる。
「俺はいい。腹減ってるからプリンじゃなくてこのハンバーグセットを頼むよ」
「それって番号なんだっけ?」
彼の方を見ないで尋ねると気だるそうに「Z103〜」と返ってきた。
書き終えて呼び出しボタンを押し、健を見るとテーブルにダラりと突っ伏している。
「今日はもしかして疲れてた?だったらごめんね」
僕は疲れた休日はただ休みたいと思う性分なので、彼に申し訳ないと感じて謝罪した。
「今、どっと疲れたんだわ…はぁ…」
「大体、なんでもっと前から言わなかったんだ?話聞く限りじゃ完全にメンヘラっつうか、なんて言うのが一番良いかわからんけど、とにかく弥生ちゃんは異常だな」
彼の言う通り、弥生は、彼女はおかしい。しかしいざ面と向かって言われても、自分が関わっていることということが実感できなかった。未だに自分とは関係のない話を話した、どこか浮ついた感覚でいる。
「やっぱり、そうなのかな」
「はぁ?お前よく考えろよ?フリーだと偽って浮気したから別れられてんのに、示し合わせたように同じ大学入って、お前の隣の部屋借りるようなストーカーは十分ヤバいだろ!異常としか言えないわ!」
言葉で表すと確かに異常だと思う。でも、そんな異常なことをする彼女の根本的理由としては。
「ご注文を伺います」
僕がある考えに辿りつこうとしたとき、店員から声をかけられた。今やっと来たかと思う反面まだ来なくてもよかったと思う気持ちにもなった。
「じゃあ、これを」
僕が番号が書かれた紙を渡すと店員は「ご注文を確認いたしますね」の後に品目を読み始める。
その途中ライスかパンかラージかスモールか等の問答を少し挟み、最後にもう一度注文を確認して店員は厨房に向かって行った。
「それじゃあ僕はドリンクバーに行くけど君は?」
「俺も行くよ」
「そう。あ、さっきの話だけど」
「なんだよ」
「浮気の相手は君だったよね?」
「…言うなよ。俺だってあれから女の子がちょっと怖ぇんだから」
僕たちはこの後、お互いに大学はどうだとか講義はどんなとか、大学生らしい取り留めのない世間話に花を咲かせ時間を潰した。
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