第13話

 俺は結局眠りに付けずに朝を迎えた。


 猫が塀をひょいと登り、俺の部屋に近づいてきた。


 「どうしよう。どうするべきか。」


 何を嘆いているかというと、あのコンサートのチケットの事である。音葉さんに宣言はしたものの、音葉さんは了解はしていない。勝手にチケットを購入し、音葉さんが現れなかったら、チケットが無駄になってしまう。それはいかがなものか。


 「どうしよう。」


 一晩中このセリフしか呟いてない。


 「どうしよう。」


 コンサートは明日だ。買うべきだろうか。でも音葉さんが来なかったら?やはり、買わないべきだろうか。でも、音葉さんは俺がチケットを持っていると思っているかもしれない。ってことは買うべきか?


 キリがない。


 そして考えに考え抜いた結果、俺は一つの結論を出した。


 俺はチケットを買うことにした。もし音葉さんが現れなかったら通りかかる人に声を掛け、開演までに何とかして買ってもらうしかない。もはや、そう考えないと結論が出ない気すらした。


 俺はコンビニに駆け込み、チケットを買った。そして、その夜、俺はチケットを握りしめて眠った。

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