第10話

 そんな事を言いながら歩いていると、ある一枚の絵の前に来た。


 「うわぁ〜なんかこの絵不気味〜。なんか、色の感じが、さっきのとは全然違いますね」


 「これは『糸杉と星の見える道』ですね。」


 「糸杉ですか」


 「ゴッホは晩年、精神病院に入り、そこで糸杉の絵を描き続けたそうです。」


 「なんで糸杉だったんだろう?」


 「様々言われていますが、一番有名なものはアレでしょうね。」


 「アレ?」


 「はい、ゴッホが糸杉を描いていたのは彼が亡くなる直前の時期です。そして、糸杉の花言葉は『死』。自殺をはかったこともある彼は、自らの死を糸杉に照らし合わせていたんじゃないかってことです。」


 「なんかゾッとしますね」


 「あくまで一説にすぎませんけどね」


 「死、かぁ」


 そうつぶやく音葉さんの顔はまるで、自分に突きつけられる運命に絶望するかのようであった。

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