第8話

 というわけで、俺たちは朝メシ兼昼メシを食べることになった。良いお店を探してるうちに、結局JRの改札前まで戻ってきた。


 「あのお店なんてどうですかっ?」


 「良い感じの喫茶店ですね」


 JRの駅前の喫茶店に入った。


 「イツキさんメニュー決まりました?」


 「はい、なんとなく。」


 「私も決まりましたっ」


 すみませーん。音葉さんがそう呼ぶと店員がすぐに来てくれた。


 「たまごサンドと、ホットコーヒーお願いします」


 「俺は、ナポリタンとオレンジジュースで」

 

 「承知致しました。」


 店員が厨房へ戻ると、音葉さんが俺をニヤニヤと見ている。


 「どうかしましたか?」


 「いや、イツキさんってオレンジジュースとか飲むんだな〜って思って」


 「コーヒーが苦手で」


 「なんか、可愛いですねっ」


 「可愛いですかね?」


 「少しだけ」


 「お待たせしました。ご注文の品でございます。」


 店員が注文した料理を全て持って来た。


 「あ!来た来た〜」


 音葉さんは子供みたいにはしゃいでいる。


 「いただきますっ」


 パクっとたまごサンドを口に含み、目を細めて喜ぶ音葉さんを俺は一生見ていたいとさえ思った。


 「早く食べないと冷めちゃいますよっ」


 そう言われ俺は現実に引き戻された。ステンレスの皿に乗ったパスタをフォークに巻き付け、口に運んだ。美味い。まともなメシは久しぶりだった。


 「あ〜美味しかった」


 「なかなか美味かったですね」


 そう言ってレジの前まで行った。本当はここで俺が全額支払うのが男らしさというものなのだろう。しかし手持ちもないので、やむなくお互いに自分の食べた分だけ支払った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る